「気が付けば、PDA」?!--多機能化を続ける米アップルのiPod

 米Apple Computerは、iPodのアドオン開発で他社と協調することを学んでいるところだ。

 今月で発売から丸2年が経つiPodは、当初、音楽再生専用のデバイスとして売り出された。その後Appleでは、iPodにアドレス帳やカレンダー、メモ帳、ゲームなどの機能を追加していった。そして、いま同社は、他の企業も機能を追加できるようにしようとしている。

 Appleは、iPodのオペレーティングシステム(OS)の公開や開発者向けのツールキットの提供には至らないものの、ひそかに複数の企業と共同で、いくつかのiPod用アドオンの開発に取り組んでいる。

 iPodの利用範囲を広げることは、買い手をよろこばせ、同時に携帯MP3プレーヤー市場でのAppleのリードをいっそう強固なものとするのに役立つだろう。同社はこれまでに140万台のiPodを販売しており、しかも半分近くが直近の6カ月間に売れたものだ。そして、この7-8月にはMP3プレーヤー市場で31%のシェアを確保し、首位に立っている(Appleが引用した市場調査結果による)。

 iPodはまた、Appleの業績にとっても非常に重要な製品で、同社が過去2四半期続けてアナリストの予想を上回る結果を残せたのも、iPodの売上が貢献したからだ。

   だが、圧倒的な優位に立ついまの状態も、そう長くは続いてくれないだろう。iPodは長らく、1.8インチの小型ハードディスクを搭載した唯一の携帯プレーヤーだったが、最近では1.8インチやそれ以下のサイズのディスクを提供するメーカーが増えるのにともない、低価格販売で知られる米Dell Computerなどがこの市場に参入してきている。

 米Technology Business Researchのアナリスト、Tim Dealによると、Appleは、iPodを一部の開発者に公開はするが、しかしオープンなプラットフォームにはしない、という形でうまくバランスを保とうとしているという。

 「開発者向けのツールキットでも提供すれば、技術革新のチャンスが増え、いろいろなものを開発しようという話も自然と増えると思う。しかし、間口を狭くしておくことで、Appleは堅実なアプローチを取り続けており、またそうした姿勢を続けている間は、気まぐれで役に立たないアイデアばかりにかかずらって、泥沼にはまり込むこともないだろう」(Deal)

 iPodのアドオンのなかで、最も注目に値するのは、ボイスレコーダーとメディアカードリーダーで、これらはAppleが先週、iTunesのWindowsバージョンの発表と同時にリリースしたもの。また同社は、米Altec Lansingと共同で、iPodにドッキング可能なスピーカーセットを開発した。またiPod用オーディオリモコン「NaviPod IR Remote」の開発には、米Ten Technologiesが協力している。Appleによると、iPodには合計130以上のアドオン製品があるというが、但しこのなかにはカスタムデザインのケース類も含まれている。

 Appleはまた、同社の開発者向けウェブサイトに、iPodを「ミュージアムモード」で動かす方法を掲載している。ミュージアムモードとは、iPodのインターフェースを音声ガイド用に変更した状態のことで、このモードでは、たとえばゴッホのある展示作品についてのテキストを、その絵画のガイドツアーのオーディオファイルにリンクさせる、といった形にカスタマイズできる。アップルでは、開発者から、こうしたアドオンについての面白いアイディアを募っている。

 iPodの新しい利用方法の多くは、それが基本的には巨大なハードディスクで、ユーザーがコンピュータのないさまざまな場所に、これを持ち運んでいけるという事実から生まれてきたものだ。たとえば、現在放映中の法廷ドラマ「Runaway Jury」の主人公は、重要過ぎてコンピュータ上に残せないと思った個人用ファイルを、iPodにこっそり保管している。

 Appleは、iPodが「世界初の、しかも最高の音楽プレーヤーだ」という同社の主張を守り続けるべく、慎重にことを運んできているが、しかし一方では、ソフトウェア、ハードウェアの両面に少しづつ変更を加えながら、iPodを現状にもっとうまく適応させようとしている。

 「我々は、iPodの開発をはじめた時から、これを大きなソリューションに繋がるものにしたいと考えていた」と、AppleのiPod製品責任者、Stan Ngは述べている。

 Appleが、最新のiPodの底面にDock(ドック)接続用の端子を付けた裏には、そんな理由もあった。なお、最新型iPodは今年4月、iTunes Music Storeのスタートと同時に発表されたものだ。

 Appleは、このリリース以前から、米Belkinと共同で、一連の周辺機器の開発に取り組み始めていた。Belkinは昨年末から、バッテリーパックや自動車用充電器のほか、今回発表されたマイクロフォンやカードリーダーなどを開発してきた。

 Belkinにとって、これは大きなチャンスであり、同時に大きな難題でもあった。AppleはBelkinに新型iPodを公開しなかったのだ。Belkinには、コネクタを理解するのに必要最低限の電気的情報しか与えらず、製品テストは、BelkinがAppleに製品を渡し、Appleがそれをテストして結果をBelkinにフィードバックするという形で行なわれた。

「Appleは、ずっと後になるまで、我々に新型iPodの設計を見せてくれなかった」とBelkinのシニアインダストリアルデザイナーで、iPod用アクセサリの設計責任者を務めるOliver Duncan Seilはそう語った。

この記事は海外CNET Networks発のニュースをCNET Japanが日本向けに編集したものです。

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