世界最大の小売チェーンである米Wal-Martが、予定していた無線在庫管理システムの実験を突如取り止めた。この実験は、RFID(Radio Frequency Identification)技術を利用した、電子商品棚(Smart Shelf)の全米初テストとあって大きな注目を集めていた。
Wal-Martは米Gilletteと提携して今回の計画を進めていたが、今週になって「マサチューセッツ州ブロックトンのアウトレットで先月開始する予定だった、Smart Shelfシステムの実験は行わない」(Wal-Mart幹部)と語った。「Smart Shelfの設置は完了に至らず、ブロックトン店舗にあった全ての資材は撤去した。RFIDチップを組み込んだ商品は一度も置かなかった」(Wal-Martの広報担当Tom Williams)
RFIDはマイクロチップを利用して、製品のシリアル番号をスキャナーに無線送信する技術。人手を介さないRFIDは、これまで在庫管理システムで利用されていたバーコードの後継技術として、製造者の物流コスト削減や販売マージンの改善に貢献するとみられている。
しかし、消費者保護団体は「製品を追跡するはずのタグで、店舗から自宅までの客の足どりを追跡できた場合、悪用される可能性がある」として、RFIDに異論を唱えていた。
Wal-Martの計画は、Smart Shelfシステムを利用して、Gilletteの製品パッケージに組み込まれたマイクロチップからデータを読み取り、在庫薄や商品盗難をコンピュータで店舗管理者に通知するというものだった。これは同時に、小売業者が倉庫から全国店舗にRFID技術を導入する、最も画期的なステップとみられていた。
店舗でのRFID実験を中止した理由について、Williamsは「幹部らが、倉庫や物流センターに絞ってRFIDシステムを導入することを望んだからだ」と語っている。同社は6月初め、上位サプライヤー100社に対して「Wal-Martに出荷する製品に、RFIDチップを取り付けること」を勧告していた。
RFID容認派は、将来この技術が、店舗で何十億という商品を追跡し、時間のない人のための自動精算や万引き防止に役立つだろうと期待している。しかし、この意欲的な計画は、「RFID技術を使った倉庫運営の改善が先だ」として、後回しになった。
Gillette幹部は今回のWal-Martの決定についてはコメントを拒否したが、「英国スーパーマーケットチェーンのTescoと、ドイツ小売大手のMetroがそれぞれ行なう同様の実験に注力する」と語っている。
この記事は海外CNET Networks発のニュースをCNET Japanが日本向けに編集したものです。
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