KDDI高橋社長が語る「5G」活用したDX戦略--虎ノ門に新たな研究開発拠点を設立へ

 KDDIは10月9日、法人向けのビジネスカンファレンスイベント「KDDI BUSINESS SESSION 2020 online」をオンラインで開催した。その中で、同社の代表取締役社長である高橋誠氏が特別講演を実施し、5G時代におけるKDDIのビジネス領域の取り組みについて説明した。

「KDDI BUSINESS SESSION 2020 online」の特別講演に登壇するKDDIの高橋氏
「KDDI BUSINESS SESSION 2020 online」の特別講演に登壇するKDDIの高橋氏

 高橋氏はまず、コロナ禍によってインターネットを介した働き方が一気に拡大し、職種にもよるが場所にとらわれない働き方が定着したと説明。さまざまなビジネス領域で、感染拡大を抑えながら経済活動を再開するために、インターネットを活用した新たなビジネスが数多く生まれていると語る。

 その上で高橋氏は、サイバー空間とフィジカル空間との間でデータが循環する「Society 5.0」について説明。フィジカル空間で取得したデータをサイバー空間に収集、それを分析することにより、フィジカル空間をより良い空間にしていくというSociety 5.0を実現するために、高橋氏は「KDDI Accelerate 5.0」を提唱している。

 具体的には、「5G」をSociety 5.0の中心に置き、ネットワーク、セキュリティ、IoT、プラットフォーム、AI、XR、ロボティクスといった7つのテクノロジーでサポートすることで、Society 5.0の循環を加速するというのがKDDI Accelerate 5.0になるという。

「KDDI Accelerate 5.0」の概念図。Society 5.0の循環の中心に5Gを置き、周辺にある7つのテクノロジーを活用してその循環を加速する取り組みになるという
「KDDI Accelerate 5.0」の概念図。Society 5.0の循環の中心に5Gを置き、周辺にある7つのテクノロジーを活用してその循環を加速する取り組みになるという

 そしてKDDI Accelerate 5.0を実現する上では、3つのレイヤの存在が重要になると高橋氏は説明する。1つは「ネットワークレイヤ」で、これは国際水準の最先端テクノロジーを導入することで、5Gのネットワーク浸透を加速する取り組みになるという。KDDIでは2020年度末までに約1万局、2021年度末までに約5万局の基地局を整備する予定だ。今後投入するスマートフォンも全て5G対応にするほか、5Gや6Gに向けての設備投資も2030年までに約2兆円を費やし、「精一杯のスピード感で実現していく」と意気込む。

5G基地局は2021年度末までに5万局を整備予定。5Gや6Gに向けた設備投資には、2030年までに約2兆円を費やすとしている
5G基地局は2021年度末までに5万局を整備予定。5Gや6Gに向けた設備投資には、2030年までに約2兆円を費やすとしている

 また法人向けの5G活用を加速する取り組みとして、同カンファレンスの前日となる10月8日に「KDDI 5G ビジネス共創アライアンス」を立ち上げたことを紹介。これは、KDDIの5Gネットワークと、企業や自治体などが場所を限定して展開する「ローカル5G」の双方を活用し、パートナー企業に最適な5G環境を提供する取り組みとなり、アライアンスに参加する17社との取り組みを積極的に進めたいとしている。

講演の前日に発表した「KDDI 5G ビジネス共創アライアンス」についても説明。KDDIの5Gとローカル5Gを活用し、パートナー企業に最適な5G環境を提供する取り組みになるという
講演の前日に発表した「KDDI 5G ビジネス共創アライアンス」についても説明。KDDIの5Gとローカル5Gを活用し、パートナー企業に最適な5G環境を提供する取り組みになるという

 2つ目のレイヤは「プラットフォームレイヤ」。これは、パブリッククラウドなどのプラットフォームを持つ海外事業者や、国内のIoT基盤を持つ企業らとコラボレートし、各企業が持つプラットフォームを活用する取り組みになるようだ。

 その具体的な事例として、高橋氏はAWSの「AWS Wavelength」を活用した5Gのマルチアクセスエッジコンピューティング(MEC)環境を、2020年中に提供すると説明。また国内企業との取り組みとして、日立製作所や東芝などとIoT世界基盤の構築を進めていることも挙げた。

プラットフォームレイヤではAWSやNVIDIAなどの海外企業や、日立製作所や東芝などの国内企業と連携し、それら企業を持つオープンなプラットフォームを活用した取り組みを進めるとのこと
プラットフォームレイヤではAWSやNVIDIAなどの海外企業や、日立製作所や東芝などの国内企業と連携し、それら企業を持つオープンなプラットフォームを活用した取り組みを進めるとのこと

 そして3つ目のレイヤは「ビジネスレイヤ」だ。これは大企業やスタートアップなどさまざまな企業と、オープンイノベーションで日本のデジタルトランスフォーメーション(DX)を加速する取り組みになるという。その具体的な例として、高橋氏は5G・IoTのビジネス開発拠点「KDDI DIGITAL GATE」や、大企業とスタートアップによる共創事業「KDDI∞Labo」を挙げた。

ビジネスレイヤではKDDI DIGITAL GATEやKDDI∞Laboなど、大小のパートナー企業と連携して新たなビジネスを創出する取り組みが重要なポイントになるという
ビジネスレイヤではKDDI DIGITAL GATEやKDDI∞Laboなど、大小のパートナー企業と連携して新たなビジネスを創出する取り組みが重要なポイントになるという

 さらに高橋氏は、三井不動産やカインズ、電源開発などのパートナー企業らと共同で、5Gを活用してサイバー空間とフィジカル空間を循環させたDXの事例をいくつか説明。ビジネス開拓から地方創生まで、幅広い取り組みを進めていることをアピールした。

 そしてもう1つ、高橋氏はKDDI Accelerate 5.0を実現する新たな取り組みとして、「KDDI research atelier」を、12月に東京・虎ノ門に開設することを発表した。KDDIは従来、埼玉県にあるKDDI総合研究所で幅広い分野の研究をしていたが、KDDI research atelierの開設にともない、KDDI Accelerate 5.0をサポートする7つのテクノロジーに関する応用研究の拠点はそちらに移し、KDDI総合研究所では5G、6Gに向けた基礎研究に集中する体制を取るとしている。

 この取り組みによって、虎ノ門にはKDDI research atelier、KDDI DIGITAL GATE、そして法人部門の新しい拠点という3つが揃うこととなる。高橋氏はこれら3つの拠点を連携させることで、5Gを活用したDXの実現に強い意欲を示していた。

KDDI Accelerate 5.0をサポートする7つの技術による応用研究の拠点として、新たに「KDDI research atelier」の設立も発表している
KDDI Accelerate 5.0をサポートする7つの技術による応用研究の拠点として、新たに「KDDI research atelier」の設立も発表している

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