地上デジタル放送のコピー制御(ダビング10)下におけるアナログチューナー非搭載DVDレコーダーへの私的録音録画補償金の支払いは必要か、否か――11月、私的録画補償金管理協会(SARVH)と東芝の訴訟沙汰にまで及んだこの騒動は、権利者、文化庁、メーカーに消費者団体まで交えた議論に発展している。
東芝がアナログチューナー非搭載DVDレコーダーを発売したのは2月。補償金の支払い期限である9月に入り、SARVHは文化庁に「対象か否か」を照会する。SARVHはここで「(補償金の対象に)該当」とされた判断をもって提訴に進むも、東芝側は「補償金対象の対象か否か明確でないため、現段階ではご購入者から補償金を徴収できない」と11月11日にコメントを発表し、徹底抗戦の構えを見せた。
東芝およびパナソニック、そして電子情報技術産業協会(JEITA)の主張は一貫している。1つ目は「コピー制御のあるデジタル放送において録画補償金は必要ない」ということ。そして2つ目「不要なコストを端末価格に反映し、消費者に支払わせることはできない」ということだ。つまり「補償金撤廃は消費者のためである」ことを大前提としている。
しかしここにきて、業界関係者の間で「補償金制度撤廃は消費者のためではなく、一部メーカーによるB-CAS体制堅持が目的」という説がささやかれているという。
この説は、補償金問題のメーカー側主役である東芝とパナソニックの両社がビーエス・コンディショナルアクセスシステムズ(B-CAS)の株主(それぞれ議決権ベースで12.2%を所有。またメーカーでは日立製作所も株主となっている)であることが起因していると思われる。そして、メーカー側の主張に「(B-CASによる)コピー制御があるからデジタル放送専用端末への補償金は不要」との考え方があることもまた、説得力を高めた印象を受ける。
「補償金撤廃は消費者のため」を錦の御旗に掲げたことでインターネットユーザー協会(MIAU)や主婦連合会の両団体が公式の意見・要望書を提出するに至ったのは周知の事実。これについては「(メーカー側の)やり口があざとい」(著作権に詳しい法学者)と指摘する声もあるが、広報戦略上の常套手段として容認される範囲内、と言えなくもない。ところが、真の目的が「メーカー自社利益のため」となると話が変わってくる。
真偽のほどを確かめるべく、まずはB-CAS運営に深く携わる放送局上層部の担当者に話を聞くと「そんな話があるんですか?」と、文字通り寝耳に水の反応。次にB-CASに話を聞いたところ、「補償金制度を巡って権利者とメーカーがもめていることは聞いているが、自分たちとは直接関係のない話と考えていた」(同社広報担当)とのこと。B-CAS自体はあくまで決められた業務を遂行するだけの会社なので、一部株主に思惑があるか否かは知るよしもないらしい。
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