月刊誌「サイゾー」の企画で、ゼロスタートコミュニケーションズにインタビューした。話を聞いたのはライブドアの役員、執行役員だった山崎徳之、羽田寛、伊地知晋一の3氏である。堀江貴文前ライブドア社長の一審判決が出る少し前、2月末のことだ。詳しくはサイゾー4月号に掲載されている『「ライブドア」と堀江貴文――”疾走"と"崩壊"の内幕』という記事に書かれている。ちなみに記事の一部は立ち読みできる。
このインタビューの際に私が何度も繰り返して感じたのは、「ライブドアの時代は、もうはるか昔になってしまった」という思いだった。もちろん、実際にははるか昔ではない。ライブドアの絶頂期――同社がフジサンケイグループに挑み、ニッポン放送を買収しようとしたのは、2005年春。わずか2年前のことだ。しかし、今となっては恐ろしく昔のことに思える。
あの当時までは、ポータルビジネスこそがインターネット業界の主力だと考えられていた。ネットの世界では、トラフィックを押さえた方が勝ち――つまりインターネットのユーザーをできるだけ数多く集客し、そしてユーザーたちに充実したサービスを提供していかにカネを落としてもらうかが、カギとなると思われていたのである。つまりはヤフーや楽天のようなポータルサイトだ。
そして成功をおさめるためには、
――という2つの要件を満たす必要があった。1を実現するためには、さまざまな広報宣伝をするほかに、もともと集客力を持っていたサイトを買収するなどの戦略がある。ライブドアがプロ野球やラジオ局に食指を動かしたのは、このためだ。
また2については、自社開発で新たなサービスを作り出すのと同時に、サービス提供企業を次々と買収し、ジグソーパズルのピースを埋めるようにサービスのラインアップを充実させていくという方法がある。ライブドアや楽天が、他のネット企業をどんどん買収し、集客力を高めてサービスを増やしていくという手っ取り早い戦略を採ったのはこのためだったのである。
この時期、ヤフーや楽天、ライブドア、サイバーエージェント、GMOインターネットといった企業は急速に巨大化していて、いずれは他社をどんどん呑み込んでいってネット業界を系列化してしまうのではないか――そんなシナリオさえ、まことしやかに語られていた。楽天やライブドアがオールドエコノミーの世界に打って出ていき、旧体制に挑戦していくのを見ながら、私も本気でそう信じていた。過去にあちこちで引用したことがあるが、以下の書籍に書かれているように、米国の自動車業界のような合従連衡がこれから本格化するのではないかと思ったのである。
成長分野での成功を目指してメーカーは乱立したが、その陰では撤退も相次いだ。1925年にウォルター・クライスラーの手によってクライスラーが設立されるまで米国だけで181社のメーカーが乱立していたが、30年代の世界恐慌を経て第二次世界大戦前にはGM、フォード、クライスラーの米ビッグスリー体制が確立した」(「自動車 合従連衡の世界」佐藤正明著・文春新書)
しかし私の予測は完全に外れて、現実にはそうはならなかった。原因は2つあったように思う。ひとつは、ライブドアや楽天の旧体制への挑戦が、その戦術のまずさもあって打ち砕かれてしまったことだ。加えてライブドアは強制捜査という手痛いしっぺ返しさえ受けた。私は裁判の経緯については取材していないので、今回の堀江判決そのものについて語るべき言葉は特に持っていないけれども、この強制捜査の背景には司法当局の独自の強い意志があった。強制捜査当時の大鶴基成・東京地検特捜部長は、事件の前年にこう語っている。
「額に汗して働いている人々や働こうにもリストラされて職を失っている人たち,法令を遵守して経済活動を行っている企業などが,出し抜かれ,不公正がまかり通る社会にしてはならないのです」
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