2008年11月27日、Googleは日本の携帯電話の絵文字をUnicodeに収録する計画を公表した。Googleはどんなプロセスを経て絵文字をUnicodeに提案すると決めたのだろうか。2月25日に公開した前編はこちらから。
2008年8月になって、Appleさんが200文字だったか300文字だったか、UTCのシンボル小委員会に絵文字のプロポーザルを出して来たんです。私達のプロポーザルでは約720文字あったんですが、より少ないコアセットにしようというものでした。Appleさんは、720文字も出したら通らないのではないかという危機感を持っていたようです。この年の秋に日本でiPhoneが発売されるじゃないですか *4。できればその頃までに絵文字を符号化したいということで、コアなものに絞れば早く通るだろうという考え方だったと思います。
その時いろいろ話し合った結果、300文字でも720文字でも問題は変わらないと。Appleさんが提案した300文字の中に、すでに問題になりそうな絵文字が入っており、どちらにしても対立は避けて通れないだろう。だったら協力体制でいこうということで、その場で決まっちゃったんですね。たった1時間か2時間ぐらいで一緒にやろうと。
そのちょっと後、サンノゼで開かれたUnicodeカンファレンスで、Microsoftさんも絵文字に興味があると言ってきました。彼等もUTCでJapanese TV Symbolsっていうプロジェクトを進めていました。これは日本のデジタル放送の規格(PDF)に入っていたシンボルを、Unicodeに収録しようというものです。彼等のほうが先に規格化されましたが、われわれのプロポーザルと同じ頃に始まったんです。それで、その頃すでに絵文字的なフォントを作るところまでいっており、いろいろ経験があるので自分達も協力できると。
なので、最初はMicrosoftとAppleとGoogleの3社でやろうということだったんです。でも最終的にMicrosoftは、プロポーザルから名前を消した方がいいだろうということになったんですね。だけれども、彼等はいろいろと協力してくれました。ピーター・コンスタブルとかミシェル・スイナール、そういう人たちがいなかったら、このプロポーザルはおそらくうまくいってなかったでしょう。
他にもプロジェクトのごく初期から、何人かの日本の識者にも助言を受けていました。2008年の夏でしたか、日本に行って直接話を伺った際、そういうのはやっぱり公開したほうがいいという意見を多数もらいました。オープンソースにできる形にして、多くの人から意見を募った方がいいんじゃないか、しかもなるべく早くした方がいいと。そういうことで、2008年11月にパブリック・プレビューに踏み切ったんです。
これは私の持論なんですけれども、実際にUnicodeやISO/IEC 10646に収録されている文字の中には、1つの言語でしか使わない文字がたくさんあるじゃないですか。私の認識ではそういうものは、文化遺産として非常に重要なものなので、今ここで符号化して後の人たちが使えるようにした方がいいだろうということだと思います。
絵文字もそういう文化遺産です。絵文字が日本独自という指摘はそうかもしれないけど、ひらがなだってカタカナだってそうです。私に言わせれば、文字というのは汎言語的な、例えばラテン・アルファベットなどを除けば、多くが言語に固有な文字体系です。そういう文字をスタンダードにするということは、固有の文化を尊重することだと私は認識しています。
まったく同じ理由で、私は日本の携帯3社の生み出した、日本ですでに10年も使われている絵文字という文化遺産を、できたらそのまま入れて欲しいと思っています。本当はそれが一番望ましい。ただ、マーク・デイビスとか、今回の提案で技術面の指導者的役割を果たしたマーカス・シェーラーは、スタンダードの世界では百戦錬磨ですから、そのままは無理だろうと言っていました。まあ、そこは意見が分かれるところなのですけれども。
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