ビデオゲーム機に関して、小売価格と部品の原価合計とのミスマッチが起こるのは珍しいことではない。ゲーム機メーカー各社はその逆ざやを、対応するゲームソフトの販売から得る利益で吸収できると見込んでいるからだ。MicrosoftもXbox 360の価格を原価以下に設定している。
また、ゲーム機の製造コストは、時間が経つにつれて急激に低下する。これは、部品のコストが下がる一方で、ゲーム機メーカーは通常なら1年ごとに部品の構成をアップグレードしたりはしないためである。実際に、Merrill Lynchの推定によれば、部品のコストは3年間で320ドル(着脱可能なドライブのコストは除く)まで下がるという。
SCEIを率いる久夛良木健氏は、このコストの低下を計算に入れている。同氏は1999年2月にサンフランシスコで行った講演のなかで、PS2に搭載されたプロセッサの表面積は239平方ミリメートル、またグラフィックチップのサイズは279平方ミリメートルと、比較的大きかったと述べていた(チップの表面積が大きいほど、そのコストも割高になる)。ところが、2004年にはそれぞれのチップが小型化され、当初の約6分の1のサイズ--わずか87平方ミリメートルになった。
以下は各部品ごとの比較である。
プロセッサ:
PS3は、SIT連合 (ソニー、IBM、東芝)が開発するCellプロセッサのショーケース的存在となるマシンだ。Cellには、IBMの64ビットPowerPCプロセッサが1基と、別々の計算処理が可能な「相乗演算処理装置」が8基搭載される。搭載されるコアの数が多ければ、マルチメディア関連のアプリケーションを動かすのには有利だが、その分チップのサイズも大きくなる。Cellの表面積は221平方ミリメートルで、Xbox 360に使われているプロセッサ(やはりIBM製で、表面積は168平方ミリメートル)よりも大きい。通常はチップのサイズが大きいほど製造コストも高くなる。
Xbox 360に搭載されるチップでは、プロセッサコアよりもキャッシュメモリのほうが大きなスペースを占めている。ふつうはキャッシュのほうがプロセッサコアよりも製造コストが安いが、Cellではこのプロセッサコアの占める面積のほうが大きい。その結果、ソニーはコストに関して2つの点で不利になる。
「Microprocessor Forum」編集長のKevin Krewellの見積もりによれば、Cellのコストは当初150〜170ドルになるという。一方、Merrill Lynchの試算では、初期コストは230ドルで、それが3年間で60ドルまで下落するとされている。それに対し、iSuppliによるXbox 360用チップのコストは推定で106ドルだ。
光学ドライブ:
PS3では、光学ドライブのコストが圧倒的に高い。IDCのアナリスト、Wolfgang Schlichtingによると、Blu-ray対応ドライブのコストは2006年に200〜300ドル、そしてこれが2007年には100〜200ドルに下がるという。それに比べ、Xbox 360に搭載されているのは標準的なDVDドライブで、HD-DVDドライブは外付けのものがオプションで提供される。
標準的なDVDドライブの卸売価格は20ドル以下で、書き込み可能なDVDドライブでも28〜32ドルで売られている。
グラフィックチップ:
グラフィックチップについては、両者はほぼ互角と思われる。MicrosoftはATI Technologiesと共同でXbox 360用のグラフィックチップを開発したが、iSuppliによるとこのチップのコストは141ドルだという。一方、ATIと競合するNVIDIAと組んでソニーが開発したチップのコストは120〜150ドルになる可能性があると、Mercury ResearchのDean McCarronは指摘している。どちらのチップも、ATIおよびNVIDIAから出ているハイエンドPC用のチップをベースに開発されたもので、さらにこの両社は激しい競争を繰り広げていることから、グラフィックチップについてはPS3とXbox 360はほぼ互角と考えて間違いないだろう。
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