キヤノンは6月18日、現実世界とコンピュータグラフィックスを融合した映像を生成する「MR(Mixed Reality:複合現実感)システム」を7月下旬より販売すると発表した。3Dデータの業務活用が進む工業デザイン分野や設計分野より販売を進める。国内市場では、キヤノンITソリューションズが販売を担当。企業の用途に応じてカスタマイズしたMRシステムを提供する。また海外での販売は、各国現地法人が検討するとしている。
キヤノンの手がけるMR技術とは、現実世界と仮想世界をリアルタイムかつシームレスに融合させる技術のこと。話題となったAR(Augmented Reality:仮想現実)技術も、広義ではMR技術の一部だ。同社は1997年より2001年まで、経済産業省(当時の通産省)傘下の研究組織と共同でMRの研究を実施し、その後は事業性を検証してきた。足かけ15年の取り組みとなる。
MRシステムは、MR用のセンサ、ヘッドマウントディスプレイ(HMD)、PC、ソフトウェアなどで構成される。システムを利用するには「Fコード」と呼ぶ、六角形を組み合わせた専用のマーカーを空間に設置して、センサでMRを利用する空間の定義を行う。その後、HMDに搭載されたカメラの映像と、PC上の3Dデータを融合。その映像をHMDのモニタに送ることで、あたかも目の前に3Dデータが存在しているかのような映像を表示できるという。
HMDにはジャイロを搭載し、マーカーと組み合わせて高度な位置合わせを実現。さらにユーザーの視線とカメラの視線の光軸を一致させる設計にすることで、文字通り、「見たまま」の映像に3Dデータを組み合わせている。ただしHMDの視野角は41度となっており、裸眼の視野角より狭い。
また、ポインタをつけたデバイス(取材時はマウスを利用した)で3次元データの配置を変更したり、色を変えたりといった、インタラクティブな操作も実現する。
キヤノンでは、3次元のデータを実寸サイズで確認できることで、製品のライフサイクル短縮化や、モックアップ制作などのコスト削減ができると説明する。たとえば自動車などでは、3Dデータだけでは実車で配線がどう見えるかといった点を細かく確認することは難しい。だがMRシステムがあれば、3Dデータだけで仮想的な実寸モックを確認できるようになる。キヤノングループでも、一部試験的に「モックレス」の試みの一環として、同システムを利用しているという。
このほか、工場に機器をレイアウトする際の空間設計などの利用も想定する。将来的には手術のトレーニングや教材など、医療、教育、エンターテインメントなどの利用シーンを想定する。
センサーの構成などによって異なるが、価格は1000万円程度を見込む。同社では、6月20日~6月22日に東京ビッグサイトで開催する「第20回 3D&バーチャル リアリティ展(IVR)」に、同システムを出展する。
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