英国のインターネットサービスプロバイダー(ISP)Virgin Mediaが実施する、ディープパケットインスペクション技術を利用した試験的なトラフィック監視計画について、欧州委員会(EC)は「注意深く見守っていく」と語った。
Virgin Mediaは2009年11月、同社ネットワーク上での違法なファイル共有の実態を把握するために、契約者の40%にあたる160万人のトラフィックを監視する計画だと発表した。同社は、識別情報は匿名化されるため該当者に知らせる必要はないとして、データパケット監視の対象となる顧客への通知は行わないと語っている。
Virgin Mediaはこの監視計画に関してEC側に連絡をとっていないが、ECは現地時間1月22日、ZDNet UKの取材に応えた。
「ECはプライバシー保護と電子コミュニケーションのセキュリティへの取り組みが優先事項の1つであることを認識しており、企業と消費者の利益となるよう今後の技術開発から目を離すことなく、欧州連合(EU)のルールを遵守する形での利用を確実にしていく」と、ECは電子メールの声明に記した。
そして、「EC各部門は、この件を注意深く見守っていく」とECは述べた。
ECは、英国法との関連においても、ディープパケットインスペクション技術の利用に興味を示している。BTが行動ターゲティング広告技術「Phorm」を顧客の同意なしに導入した件で、英国政府が調査を拒否したことから、ECは英国政府が全欧州的な法規制に違反したのかどうか長期的な調査を実施している。
Virgin Mediaが利用するディープパケットインスペクション技術は、情報収集に関する技術を手がける企業Deticaの「CView」という製品になる予定だ。実施日程は明らかにされていない。
しかし、この計画はプライバシー擁護派から非難を浴びており、英国のプライバシー擁護団体Privacy Internationalは実施されれば行動を起こすと宣言している。
「Virgin Mediaがこの計画を実施したら、(ロンドン警視庁へ)犯罪として訴えるつもりだ。われわれが懸念するかぎりVirgin Mediaは捜査権限規制法(Regulation of Investigatory Powers Act:RIPA)に抵触することになるからだ」と、Privacy Internationalの倫理ネットワークを率いるAlex Hanff氏は述べた。
Hanff氏によれば、捜査権限規制法を含めて英国の監視法では、ファイル共有の証拠を押さえる目的で、ISPが裁判所命令を先に取得することなく通信を監視する権利を有するとは記されていないという。
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。原文へ
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