Googleがビデオ共有サイトのYouTubeを16億5000万ドルで買収したことは、何はともあれ、オンラインビデオ市場への期待の高さを示している。
インターネットで動画を視聴する人が増えるにつれ、ウェブサイトが動画形式で配信する広告の量も増している。その広告料が唯一の収入源になっているサイトも多い。
今のところ、広告自体は従来のテレビ広告とさほど違いはない。だが、そうした状況も広告主がウェブの特性に詳しくなるにつれ、程なくして変わっていくだろう、と専門家たちは予想している。さらに、ネットユーザーが遠ざかり、有望なオンライン広告市場が台無しになるような事態を招きたくないのなら、ビデオ広告は変わらざるを得ないと主張する専門家もいる。
大きく分けると、いわゆるストリーム内広告(in-stream ads)とバナー内広告(in-banner ads)の2種類がある。バナー内広告はさらに2種類に分けられ、ネットユーザーがページにアクセスすると再生が始まる「ホスト主導型」と、ユーザーが静止した広告の上にカーソルを動かすか、または広告をクリックすると再生が始まる「視聴者主導型」がある。
いっぽうのストリーム内広告は、広告を流すタイミングによって分けられる。メインのコンテンツが始まる前に広告が出るのが「プリロール」、終了後に出るのが「ポストロール」、途中で流れるのが「ミッドロール」または「インターステイシャル広告」と呼ばれる。ストリーム内広告の大半はプリロールだ。ビデオ広告の長さは通常、15秒あるいは30秒であることが多い。
インターネット広告の業界団体Interactive Advertising Bureau(IAB)が作成したガイドラインがある。このガイドラインでは、ビデオ広告が掲載されるコンテンツを「インタラクティブ環境で提供されるストリーミングビデオ、アニメーション、およびゲームが含まれる」と規定している。また、IABはプリロール型とミッドロール型の広告の長さは30秒以内にするよう勧めている。ポストロール型の広告については特に時間制限に関する表記はない。
しかし、広告専門家の多くは30秒では長すぎると指摘している。1、2分程度の長さしかないことの多いビデオクリップに掲載される広告の場合は、特にそうだ。広告代理店Publicis Groupe傘下のコンサルタント会社、Denuoでシニアバイスプレジデントを務めるTim Hanlon氏は次のように言う。「1分30秒のコンテンツを見る前に30秒の広告を無理やり見せられるなんて耐えられない。コンテンツと広告のバランスがうまく取れていないように思える」
さらに、Online Publishers Associationのプレジデント、Pam Horan氏は「消費者がオンラインビデオ広告を我慢して見ていられる時間は10秒だ」と述べている。
IABのガイドラインは、ホスト管理による自動再生方式を推奨し、その場合は視聴者が自分でビデオ広告を再生、停止したり、ボリュームを上げ下げしたりできるコントロール機能をつけるよう求めている。ただし、同ガイドラインでは早送り機能については無効にするよう勧めている。つまり、視聴者はビデオ広告を最後まで見なければ、自分の見たいビデオクリップにたどり着けないわけだ。だが、これもオンラインビデオ広告で評判の悪い点だ。「広告がスキップできないと、視聴者は自分が人質にされたような気分になる」と Hanlon氏は指摘する。
残念ながら、ほとんどのオンラインビデオ広告はテレビのコマーシャルとそっくりだ。Hanlon氏は「オンライン上でテレビのまねをしても効果はない」と指摘している。しかも、オンライン広告はスペースが限られているため、同じ広告が何度もしつこく繰り返される状況が見られるという。
オンラインビデオ広告は、もっと対象を絞りこみ、インタラクティブ性を高める必要があるという点で専門家の意見は一致している。「今のビデオ広告は、オンラインメディアの持つインタラクティブ性を生かしていない。オンラインの良さは、広告にさまざまな広がりを持たせ、より突っ込んだ表現ができることだ」と、IABのシニアバイスプレジデントでゼネラルマネージャーを務めるSheryl Draizen氏は言う。複数の専門家が提言するのは、ウェブ利用者が広告か広告内の「特定の部分」をクリックしてリンク先のページを見るだけで、広告に載っていた製品の詳しい情報を入手したり、販売店と連絡を取ったり、アンケート調査に参加できたりする、といった形式だ。
また、Google AdSenseのプロダクトマネージャーGokul Rajaram氏は、「広告代理店は、オンラインとテレビ用広告を同時に撮影して、テレビ広告でカットされた場面や面白いNGシーンを(オンライン広告に)利用するべきだ」と指摘する。
ゆくゆくは、オンラインビデオ広告はウェブ利用者の行動パターンに沿った形になるだろう。例えば、広告サイトで中古車を探していた消費者がニュースサイトに移ったら、そのニュースサイトのページに自動車のビデオ広告が表示されるといったものだ。
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