HDDレコーダーはテレビの味方?--視聴時間は増加

永井美智子(編集部)2005年06月02日 21時31分

 HDDレコーダーを利用している人の半分以上がCMをスキップしているため、テレビCMの価値が損なわれているという野村総合研究所(NRI)のレポートが広告関係者らに衝撃を与えた(関連記事)。

 そして、NRIは立て続けに関連レポートを公表した。今度は「HDDレコーダー保有者のほうが非保有者よりテレビを視聴する時間は長い」としたうえで、テレビCMについては「HDDレコーダー保有者の80%が『大部分のCMを飛ばす』と答えている」としている。連日のレポート公表で、テレビCMの価値低下をさらに強調したかたちだ。

 これは、6月2日に発表した調査レポート「家庭内におけるデジタルコンテンツ流通実態調査」に示されている。

 調査は4月27日から28日まで、インターネット上で行われた。回答者は1000人で、HDDレコーダー保有者と非保有者が半数ずつとなっている。なお、同総研が行った事前調査では、HDDレコーダーの保有率は26.2%だった。

NRI情報・通信コンサルティング二部副主任コンサルタントの廣戸健一郎氏

 レポートによると、HDDレコーダーの保有者が1週間にテレビをリアルタイムで見る時間は平均18.0時間で、非保有者の19.9時間より約10%少ない。しかし、録画番組を見る時間は7.5時間で、非保有者の3.5時間に比べて2倍以上となっている。これに市販やレンタルのDVDを見る時間を加えた1週間のテレビ総視聴時間はHDDレコーダー保有者が28.3時間、非保有者が25.5時間となり、2.8時間もの差が生まれている。

 大量の番組を撮りためておけるHDDレコーダーの特性が視聴時間を伸ばしたのか、それとも長時間テレビを見るユーザーほどHDDレコーダーを購入する傾向にあるのか。この因果関係については、「現在調査中」と同総研は話す。ただし、今回の調査でもHDDレコーダー保有者の80%が「大部分のCMを飛ばす」と答え、テレビCMが見られていないことに変わりはないとしている。

 さらに、ユーザーがコンテンツを蓄積して視聴するようになるほど、どのコンテンツを視聴するかという編成権は放送者側からユーザー側に移る。これにより、コンテンツの流通メディアのパワーバランスが変化する可能性があると同総研では指摘している。

 NRIはHDDレコーダー保有者が撮りためた番組のデータ量についても調査している。これによると、HDDレコーダーのHDDに撮りためてある番組数は平均26.9番組で、1番組のデータ量を2.7Gバイトと仮定すると、72.6Gバイト分の番組が保存されていることになる。また、これとは別にPCにも番組を保存しているユーザーが20.4%おり、保存データ量は平均56.2Gバイトだった。さらに市販のDVDパッケージを27.9枚、録画DVDを26.7枚保有しており、大量の番組データが家庭内にあることがわかる。

 HDDレコーダー保有者は家庭内LANに関心が強く、導入率が高いことも明らかになった。HDDレコーダー保有者の約50%が家庭内LANをすでに構築しており、12%はネットワーク対応のHDDレコーダーをLANに接続している。「EPG(電子番組表)を使ったり、携帯電話から録画予約したりする使い方もあるが、HDDレコーダーに保存した番組データをPCに移行するためにLANを利用するユーザーのほうが多いようだ」(NRI情報・通信コンサルティング二部副主任コンサルタントの廣戸健一郎氏)

 ただし家庭内LANは家の壁や扉がネックとなって、LAN接続機器があるのは2部屋までという世帯が4分の3を占める。廣戸氏は、既存の電力線を通信回線として利用する高速電力線搬送通信(高速PLC)や、通信速度が100Mbps以上になると言われる高速無線LANの802.11nが普及すれば壁などの障害を簡単に乗り越えられるようになり、家庭内LANがさらに広がるとみている。

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