ブロードバンドやHDR(ハードディスク・レコーダー)が普及して、テレビの視聴に変化が起きている。野村総合研究所(NRI)が5月31日に公表した調査レポートで明らかになった。この調査の結果、NRIではテレビCM市場において約540億円の価値が失われたと試算し、「企業は広告のあり方や宣伝手法を考え直すべきだ」と提言している。
調査では、HDRの利用状況やブロードバンドの普及状況、メディア利用時間の変化に関して、インターネットアンケートを実施した。アンケートの実施期間は4月22日〜24日で、回答者数は3000人となっている。
調査によると、HDRユーザーのうち、HDDに録画した番組を視聴する際にテレビCMをすべてスキップする人の割合は23.4%となっている。この数字と、テレビCMの80%以上をスキップする人の割合33.0%を合わせると、過半数の人がほとんどのCMをスキップしていることになる。
また、NRIでは「平均CMスキップ率64.3%」と、HDDに録画した番組の視聴割合である「平均録画消費率34.2%」、2004年から2005年の「HDR普及率」(グラフ1)を、公表されている企業の年間テレビ広告費(電通の「日本の広告費」2004年の数値)に掛け合わせると、2005年のテレビCM市場の約2.6%、金額にして約540億円の価値が失われると試算した。NRIは、「HDRの世帯普及率は今後も伸び続けることから、今後さらにテレビCMの価値は損なわれていく恐れがある」としている。
同調査では、ここ1年間でのメディア利用時間の増減も調査している。その結果、「インターネット(PC)の利用時間が増えた」と回答した人の割合が最も多かった(グラフ2)。これに対し、テレビや新聞、雑誌、ラジオのマスメディア4媒体では、利用時間が減った人の割合が、増えた人の割合の2〜3倍となった。つまり、インターネットが1人あたりのメディア利用時間の多くを取り込んでいることがわかる。NRIでは、今後のブロードバンド普及と、それに対応したネット上の情報量の増加によって、「テレビとの接触時間や影響度は減少し続けることが考えられる」としている。
3つの新たな宣伝手法を提示
NRIではこうした調査結果から、「企業はテレビCMをはじめとするマスメディアの広告価値を改めて考え直す必要がある」としている。また、従来の手法に代わる今後の具体的な広告や宣伝策として、次の3つを挙げている。
この中でもNRIは、ターゲットを絞ったインターネット広告や、携帯電話を利用したモバイル広告、ポイント付与サービスなど、消費者の個人的志向を意識した広告や宣伝形態が、2010年ごろまでに急成長する可能性が高いと見ている。その理由として同社では、(1)インターネット接触時間の増加や、ブロードバンド利用者およびコンテンツの増加によって、インターネット広告の価値が上がること、(2)ポイントサービスにおける提携が進み、提携先企業の顧客をターゲットとしたプロモーションが頻繁に行われること、(3)ICカードの普及とユビキタス化の進展により、適切な場所や時に合わせた広告配信が可能になることなどを挙げている。
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