「Web2.0という言葉が盛り上がる中、いままでのヤフーから新しいヤフーに変わる過渡期だと考えている」--ヤフーのリスティング事業部検索企画室室長である井上俊一氏は、11月18日に開催されたシーネットネットワークスジャパン主催のイベント「CNET Japan Innovation Conference 2005 Autumn 次世代ウェブの検索サービスを探る」(CJIC)で、ヤフーの現状をこのように表現し、いわば「ヤフー2.0」に向けて大転換するためのビジネス戦略や新機能、サービスについて説明した。
最初に井上氏は、10月のYahoo!検索のリニューアルについて話した。登録したサイトを表示する方式から、YST(Yahoo! Search Technology)を使ったロボット型のウェブ検索を標準にしたが、「リニューアルの背景をよく聞かれる。これまでのカテゴリー登録ではトップページが登録されていたが、ユーザーはトップページだけを探しているわけではないので、そうしたユーザーのニーズに合わせた」とした。
以前は、検索エンジンの精度に問題があったため、人力でサイトを登録したカテゴリー検索は非常に意味があったが、精度や質が向上して登録されたページも含めてあらゆるページの検索結果が得られるようになったために変更したわけだ。
そうはいっても、以前のカテゴリー検索はタブによる切り替えで利用するように変更しただけで、そのほかは一切変更していない。そして、12月早々にはカテゴリー検索もリニューアルする。1つは以前に検索したサイトに行きやすくするために、カテゴリー検索の履歴機能を付けることだ。もう1つは、検索結果は現在五十音順に表示されているが、人気順に並べる機能を付けることだ。人気は、YSTの技術を使って測る。
標準検索をYSTに切り替えてから、「カテゴリーへの登録(ビジネスエクスプレスを使った登録)はこれまでのように重視しなくてもいい」などの声が一部であがっていることに対して、井上氏は「ビジネスエクスプレスも以前のままだし、サーファーも居なくなったわけではない。ヤフーにトップページを登録することは今でも非常に重要なことだ。ロボット検索を主体にした検索に切り替えたからといって、ビジネスエクスプレスの登録を考えていた人がやめてしまうのはもったいない」と反論した。
事実上ロボット検索しかないことになると、どうやって誘導するかが重要になる。そこで、通常はSEO対策をすることになるが、ヤフーという大きなサイトからリンクされているのと、リンクされていないのとでは、その効果に決定的違いがあるという。ヤフーに登録されれば、ヤフーから直接トップページへリンクされるので、「うまくサイトマップを構成して各ページに誘導すれば、ヤフーでもヤフー以外の検索エンジンでも検索結果の上位に表示される可能性が高くなるのは当然のことだ。ヤフーに登録されることは最低限必要なことだと考えている」と主張した。
次に、井上氏は今後のYahoo!検索についての方向性を示した。「Web2.0という言葉を非常によく聞くようになったが、昔からネットの本質ばかりを考えてきた人にとっては割とあたりまえの話が含まれている。何が何でもWeb2.0みたいなことはないと思うが、これまで分散していたWeb2.0の考え方をまとめておくことは有意義だと思う」と前置きし、Web2.0の概念は検索市場では当然の話が多く含まれていることを強調した。
そして、「『検索』というのははじめからロングテールだった。検索に携わって7年以上になるが、7年前からロングテールだった。昔はウェブページが少なかったので、検索してみようという人も少なく、検索ワードも少なく、それがいまはある程度多くなった」とした。また、「検索は最初からマスメディアではなくマイメディアだった」とし、テレビのチャンネルや新聞を選ぶ際にあらかじめある5つか6つの一定の選択肢からではなく、何十億何百億というページからユーザーがそれぞれどこを選択するかわからないものだと説明した。さらに、「検索を提供する側は検索という仕組みを作っているだけで、他人が作ったコンテンツのデータベースである」と付け加えた。
そうした検索サービスについて井上氏は、「宇宙の果てと一緒で、検索サービスという世界はゴールがない永遠のベータだ」とし、改善し続けなければならないサービスであることを強調した。ゴールがないために、何らかの基準を持たないと改善して進んでいるかどうかが判断できないので、ヤフーではその基準を以下の5つ定めているという。
RCFPT(改善の基準)
こうした基準を定めたうえで、改善されているか、前進しているかどうかを実際のトラフィックを使って「Bucketテスト」として検証している。ヤフーを利用している数%のユーザーに対して、ランダムで通常とは違う検索結果やインターフェースを表示させ、ユーザーがどう行動したかをデータとして把握している。「非常に細かい点を通常とは替えて検証しているので、そうした表示がされてもきっとユーザーはわからないだろう」と言う。
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