IBMとSamsung Electronicsは、半導体製造に関して3件の契約を結んだ。この契約で、IBMの技術をベースとしたチップの種類が増えることになるかもしれない。
Samsungは5日(米国時間)、同社がIBMのチップ製造技術に関するライセンス契約と、IBM Microelectronicsのチップ製造サービスの利用契約を同時に結び、また将来のチップ製造プロセス開発に重点を置いたIBMが後援するパートナーシップに参加したことを発表した。
Samsungは、IBMとInfineon、Chartered Semiconductorの3社が現在進めている提携に加わることになる。この提携は、参加メーカー各社が65ナノメートルプロセスとして知られる次世代のチップ製造技術、およびその次の45ナノメートルプロセスへと移行するのを支援するもの。チップ製造技術の世代を表すのによく用いられるナノメートルという単位は、チップ内部の要素間の平均距離を表している。1ナノメートルは、10億分の1メートルにあたる。
こうしたライセンス契約や提携への動きは、IBM社内の流れと、半導体業界全体の流れという、2つの交わるトレンドを示すものである。
IBMは最近、チップの研究開発や製造に関する同社の専門知識からより多くの収益を上げようとしてきている。同社はPowerPCチップのライセンス提供やチップ設計サービスを始めているほか、ニューヨーク州イーストフィッシュキルの新工場でチップ製造サービスを開始している。
業界全体では、チップの製造が世代の進むごとに難易度を増してきている。チップメーカー各社は、製造技術の世代が進むごとに、高性能・低価格を実現してきた。しかし最近では、トランジスタを追加する従来のアプローチがますます難しくなってきており、消費電力の大幅な増加などの問題が生じている。このためチップ設計者はクリエイティブな解決策を求められており、それが各社の協力につながることとなった。
またチップ製造施設の建設にも、ますます多くの費用がかかるようになっている。現在、チップ製造施設の建設には20〜30億ドルが必要とされている。
イーストフィッシュキルにあるIBMのAdvanced Semiconductor Technology Centerでは、提携各社が参加してすでにチップ製造技術の開発を進めているが、これにはIBMのチップ製造技術が叩き台として利用されている。提携を結んだ4社は、自社リソースを出し合ってアイディアを共有し、共通の製造プロセス開発に取り組んでいる。各社は後に、ここで開発した製造プロセスを自社の製造施設で利用できることになる。
この提携によって参加メーカー各社は新たなチップ製造技術を手に入れることになるが、一方ではこれがIBM発のチップ製造技術による半導体業界の整理統合を押し進めることにもつながることになる。
Samsungはまた、IBM Microelectronicsから90ナノメートルのチップ製造技術もライセンス提供を受け、高品位テレビなどの電子機器に搭載するシステムオンチップ(System-On-Chip:SOC)プロセッサの製造に利用する。SOCプロセッサは、プロセッサコア、メモリ、画面コントローラーなど必要なすべての要素をひとつのチップに詰め込んだもので、メーカーはこれまで2つ以上のチップを使っていた部分を、ひとつのチップでまかなうことが可能になる。
家電大手各社のなかで、チップ製造に関してIBMと提携しているのはSamsungに限らない。IBM、ソニー、東芝の3社は、Cellという新種のプロセッサに関する設計・製造の取り組みで協同している。このチップはソニーの次期プレイステーションなどの各種機器に搭載されるとみられているものだ。
先月ソニーはIBMと3億2500万ドルを投資して、East Fishkillのチップ製造設備を拡充し、Cellプロセッサなど65ナノメートルプロセスでつくられるチップの生産能力を増強した。
さらにIBMは、最近ではAdvanced Micro Devicesに技術のライセンス供与を行い、またMicrosoftにも次期Xbox用チップの製造に関して技術をライセンスしている。また同社は、Nvidiaからの委託契約も請け負い、現在同社のグラフィックチップを製造している。
IBMでは、ソニーとの契約で生産する65ナノメートル・チップの出荷開始時期を2005年後半と予想している。なお、同社や他のチップメーカーは現在90ナノメートル製造プロセスを使ってチップを生産している。
この記事は海外CNET Networks発のニュースをCNET Japanが日本向け に編集したものです。
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