JPMorgan ChaseはIBMと契約していた50億ドルに上るIT関連業務のアウトソーシングをキャンセルしたが、これは大規模なアウトソーシング契約が恐竜のごとく絶滅の道をたどることを示しているのかもしれない。
IBMとJPMorganの契約は、近年記憶に残る中でも最大級の契約の1つだが、10億ドルを超える規模の契約で後に解消もしくは問題となったものはこれに限らない。IBMと競合するElectronic Data Systemsも、Dow Chemicalと交わしていた14億ドルの契約を、先頃「相互に」解消している。
いわゆる超大型案件は、サービスベンダーにとってはうまみが少ないと見られ、顧客に最大限の価値が提供されない可能性もある。調査会社Meta Groupのアナリスト、Stan Lepeakは、こうした契約は管理が非常に困難になる場合もあるという。
「超大型契約は減少すると思う」(Lepeak)
IBMは、JPMorganとの契約で、同社のデータセンター、ヘルプデスク、分散コンピューティング、データネットワーク、音声ネットワークなど、データ処理のためのインフラのかなり大きな部分を肩代わりすることになっていた。
JPMorganの説明によると、2002年に結んだIBMとの7年契約の期間が短縮されたのは、最近JPMorganがBank Oneとの経営統合を完了し、自前の技術やインフラを管理する能力が向上したからだという。
しかしアウトソーシング--つまり、ITや業務の外注化の動きは、企業がコストを削減し、自社の核となるビジネスに集中するための手段として、活発に行われている。市場調査会社のGartnerが先月発表した報告によると、アウトソーシングの市場規模は世界全体で、2003年の2934億ドルから年率7.9%で成長し続け、2008年には4292億ドルに達する見込みだという。
Gartnerは今年に入って、ITサービスベンダーへの超大型契約(フルサービスを内容とする契約期間が10年におよぶもので、数十億ドル規模の金額のもの)が減少するとの予測を明らかにした。現在は、具体的なビジネス上のゴールを持つ小規模な契約が増える傾向にあるという。
しかし、超大型契約がなくなったというわけではない。EDSとDowが契約を解消した翌日、IBMはDOWと7年にわたるITサービス契約を締結したと発表した。
それでも、アナリストらは比較的規模の小さなアウトソーシング契約がさらに増加すると予測している。Forrester ResearchアナリストのRobert McNeillは、この傾向の背後には全般的な低価格化の圧力が働いているという。多種多様な機能をカバーするアウトソーシング契約を受けられる能力があるのは、ごく一部のサービスベンダーに限られると同氏はいう。外部委託する業務を小さな単位に切り分ける--たとえば、デスクトップコンピュータの管理だけを委託すれば、請け負う能力があり入札に参加できる企業の数が増える。「このやり方で、競争をあおることができる」(McNeill)
また契約規模が小さくなれば、何に金を支払っているのかを顧客が理解しやすくなると、GartnerアナリストのBruce Caldwellはいう。「アウトソーシング契約の発注者は、賢いやり方で契約を出すようになっている」(Caldwell)
加えて、超大型契約はサービスベンダーにとっても必ずしも歓迎すべきものではない。EDSは、2003年にある大口の契約で2億5500万ドルの営業損失が出たと述べたが、アナリストはこれがDowとの契約を指すと指摘していた。
この記事は海外CNET Networks発のニュースをCNET Japanが 日本向けに編集したものです。
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