世界に75の研究所を持ち、7000人の研究開発者を抱えるIntel。2003年に米国で得た特許件数は1592件で、この数はトップ10にランクされるという。2004年の同社の研究開発費は48億ドルとされており、「不景気でも決してR&D費用を削減することはなかった。むしろ増やしたほどだ」と、Intel最高技術責任者(CTO)のパット・ゲルシンガー氏は語る。ゲルシンガー氏は3月4日、都内にて開催された記者懇親会でIntelの研究開発活動について講演を行った。
Intel最高技術責任者(CTO) パット・ゲルシンガー氏 | |
ゲルシンガー氏はまず、プロセス技術について述べ、「新しいプロセス技術は2年ごとに出していく」とした。現在は90nm技術で同社のチップは製造されているが、2005年にはトライゲート技術などが盛り込まれた65nmプロセスが登場する予定で、その2年後には電流漏れ防止機能などが採用された45nm技術が登場する。さらにその2年後には32nmのプロセス技術を導入するとしており、そのための投資もすでに始まっているとゲルシンガー氏はいう。
Intelでは、ムーアの法則を拡張するべくトランジスタの集積度向上以外にも研究活動を行っている。それは、先月米国にて開催されたIntel Developer Forumで同氏が語った、設定変更可能なプロセッサ技術や、スレッディング技術などだ。また、Xeonの64ビット拡張技術については、「技術的にはそれほど困難なことではない。ただ、これまで手がけてこなかったのは、この技術を用意してもソフトウェアがサポートしていないと意味をなさなかったためだ。これは、Intelがいくら時間と費用を使って64ビット版Itaniumを開発しても、ソフトウェアの環境が整っていなかったという苦い経験もあって、これまで踏み切れなかった」とゲルシンガー氏はいう。だが、こういった環境が整ったため、発表に踏み切ったという。AMDのOpteronとの違いについては、「ソフトウェア開発者の視点からすると互換性があるといえるが、(Xeonの基盤となっている)NetBurstアーキテクチャがサポートする命令セットをOpteronがすべてサポートしているわけではない」と説明する。
64ビットから128ビットに移行する必要性は出てくるかとの問いには、「32ビットが1986年に導入され、現在確かに32ビットのアドレス空間は使い切った。しかし、64ビット分のアドレス空間を使い切るのは何十年も先であり、私もこの業界にはいないだろう」と述べた。
Intelでは、パートナーや顧客とも戦略的なリサーチプロジェクトを行っているというが、これについてゲルシンガー氏は、「顧客のニーズを把握したうえで製品化につなげることができる」という。また、PCメーカーはデジタルホームの中心がPCだと主張し、家電業界はデジタルホームの中心が家電だと主張するなか、Intelの立場としては「どちらか一方が中心になるとは思わない。双方で似たような機能を提供するようにはなるだろうが、両方の技術をそれぞれの用途に合わせて使い分けることになるだろう。どちらが中心かは問題ではなく、すべてがネットワーク化され、融合されていくという点が重要なのだ。それぞれのデバイスがネットワーク上でどういった貢献ができるか、これを考えるべきだろう」と述べた。「Intelは今後も、PCメーカーにはPC用チップを、家電メーカーには家電用チップを提供していく。PCで成功したIntelのビジネスモデルは、PC以外の世界にも十分生かせるはずだ」(ゲルシンガー氏)
日本の特許裁判には「賛同できない」
Q&Aセッションでは、Intelのコア技術についての質問が中心であったが、その中で印象に残ったのは、企業の従業員が特許料の支払いが不十分だとして勤務先を訴えるケースについてどう考えるかとの問いだ。
これについてゲルシンガー氏は、「賛同できない」と答えている。Intelの研究者として同氏自身も約10の発明で特許を取得しているが、Intelでは特許取得に結びついた研究に対して、研究者に約1000ドルのボーナスが支給されるという。「これは大きな額ではないが、私自身はIntelの社員として毎月給料をもらい、研究開発のための設備投資も自分自身では行っていない。こういった研究設備があってこそ、私は特許に結びつく発明ができたのだし、特許取得にかかる弁護士代金も負担していない」と、Intelの研究者に対する待遇は正当だとした。「私は雇用契約を結んだ時点で、自分の発明はIntelの所有するものとなると納得している」とゲルシンガー氏は述べ、社員と企業の妥協点を見いだすことの重要性を語った。
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