「Nike FuelBand」はそのうちコレクターズアイテムになってしまうのだろうか。
Nikeは2年前、手首に装着するFuelBandフィットネストラッカーを発表し、スポーツウェアからテクノロジへと事業を拡大した。同社の事情に詳しいある人物が米CNETに語ったところによると、Nikeはウェアラブルハードウェア市場からの撤退について真剣に話し合っているという。
Nikeは現在、150ドルのフラッグシップデバイス「Nike+ FuelBand SE」と140ドルのスポーツウォッチ「Nike+ SportWatch」を販売している。同社はこれらのデバイスの売れ行きに関する数字を一度も公表していない。
しかし、誕生して間もないフィットネストラッカー市場の規模は2013年時点で3億3000万ドル程度と推定されており、Fitbit、Jawboneから、Withings、Garminまで、さまざまな企業がその市場のシェアをめぐって争っている。The NPD Groupによると、2013年に実店舗および大手オンライン小売業者で販売されたすべてのウェアラブルフィットネストラッカーにFuelBandが占める割合は、10%だったという。
FuelBandの販売を終了しても、Nikeとウェアラブル分野の関わりが完全に終わるわけではない。Nikeは、リストバンドを販売するよりも、どんどん高機能になっている同社のデジタルフィットネスプラットフォーム「Nike+」向けにデータを収集したり、アプリを開発したりする役割を担った方がいいかもしれない、とアナリストらは話す。Appleと提携してもいいかもしれない。Appleの最高経営責任者(CEO)であるTim Cook氏は9年前からNikeの取締役を務めている。さらに、Nike FuelBandのコンパニオンアプリは、2年前に市場に登場してから現在に至るまで、Appleの「iOS」モバイルOSを搭載する「iPhone」と「iPad」でしか利用することができない。
Stifel, Nicolaus & CompanyのNike担当アナリストであるJim Duffy氏は、Nikeのウェアラブル分野への取り組みについて、「Nikeの狙いはFuelBandを売ることではない。顧客データベースと、同社が対話できる顧客集団を構築すること、そして、人々をよりアクティブにして、中核的製品の需要を促進することが狙いだ」と述べた。
Nikeは2013年11月に次世代FuelBandを発売している。先述の情報筋によると、Nikeがウェアラブルハードウェア市場からの撤退について話し合ったのは、ここ数カ月のことだという(これらの話し合いは機密事項なので、同情報筋は匿名を希望した)。ある時点で、ウェアラブルハードウェアの開発を正式に終了する決定が下されたが、現在も審議が進行している可能性があるので、最初に話し合いが行われてから、その決定は変更されたかもしれない、と同情報筋は述べた。
Nikeがこれ以上コメントすることは何もない、と同社の広報担当者は話している。
Nikeのウェアラブルハードウェアからの撤退の可能性は、既存のモバイルデバイスメーカーが、新たな機会を求めてウェアラブル市場に目を向けている中で浮上した。Googleの「Android Wear」(ウェアラブルデバイス向けに設計されたOS)はMotorolaやFossilなど、多くのパートナーの関心を集めており、両社はAndroid Wear搭載スマートウォッチを発売することを既に発表済みだ。
サムスンは2013年に同社初のスマートウォッチを発表した後、「Gear」ウォッチシリーズと「Gear Fit」リストバンドのアップデートを継続的に行っている。一部報道によると、Appleは2014年中にウェアラブル市場に参入し、「iWatch」と呼ばれるスマートウォッチを発表する予定だという。
Nikeは2006年に「Nike+iPod」ランニングトラッカー(Nikeによるテクノロジ分野への初めての試みで、同社のブランド戦略に本質的な変化をもたらした)でAppleと手を結んでおり、両社の提携の有効性は既に実証済みだ。Cowen and CompanyのNike担当アナリストであるFaye Landes氏は、「両社の提携は非常に実りの多いものになるかもしれない」と述べた。
本記事の執筆に当たって、米CNETはウェアラブル分野でのNikeとの関係についてAppleに尋ねたが、同社はコメントを控えた。
「今から5年後、Nikeはこの(ウェアラブルデバイス)事業に携わっているだろうか。Nike+のインストールベースを考えると、同社がNike+事業に携わっていることは間違いない」(Landes氏)
2013年8月の時点で、NikeはNike+プラットフォームには1800万人のユーザーがいると話していた。同社は米国時間2014年4月10日、ユーザー数はそれからも増加を続け、2800万人に達したと発表した。
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