今から12年前、Appleは遅れを取っていた。
PCを所有する消費者は音楽をハードドライブにリッピングして、プレイリストを作成していた。彼らはそうしたプレイリストをCDに焼いて、車の中で、また外出中に聴いていた。これと同じ体験を「Mac」で実現するのは容易ではなかった。
Appleの解決策は、「iTunes」だった。iTunesは、それらすべてのことを実行できると約束し、しかもライバルよりもシンプルで、Macのみに対応していた。
iTunesはすぐに、ハードウェアとソフトウェアを強固に統合することの利点を示すケーススタディとなった。Macを所有していなければ、iTunesを使うことはできなかった。その結びつきは「iPod」の登場によって、より一層強くなった。洗練されたMP3プレーヤーであり、後にAppleが消費者ブランドとして信じられないほどの成長と人気を短期間で手にするきっかけを作ったiPodは、箱から取り出した瞬間から、その生存とコンテンツの供給をiTunesに依存していた。
その頃と比較すると、今日の状況は一変している。CDはほぼ死に絶えている。人々はCDを購入する代わりに、いつでも好きな場所で自分の音楽を楽しむようになった。これは、ライバル各社が提供する有料ストリーミングサービスやApple自身の有料の「Match」サービスを通して実現される。Matchはコピーをクラウドに保存し、ユーザーがいつでもそれを再ダウンロードできるようにするサービスだ。
その上、iPodから「iPhone」や「iPad」まで拡大したAppleのポータブルデバイス群はすべて、デスクトップソフトウェアのiTunesには全く触れなくても、セットアップして使用できる。その結果、iTunesはもはやハブではなくなり、そのことは同ソフトウェアにちょっとしたアイデンティティの崩壊をもたらしている。
11月中にMac版と「Windows」版の両方がリリースされるとAppleが話すiTunesの次のバージョンは、人々がコンピュータ上でコンテンツを保存および使用する方法のそうした変化の一部に対応する最新の措置となっている。最新バージョンは、Appleのメディアストアや、有料サブスクリプションサービスの一環としてAppleのクラウドに無期限でバックアップおよび保存できるようになったユーザーの音楽コレクションとさらに密接に統合される。Appleはよく使われる機能の多くをウィジェット化して、ユーザーがiTunesの外側でほかの作業をしているときでも利用できるようにするため、iTunesの再設計も行った。
そして長年のユーザーにとって、これらはすべて歓迎すべき追加機能になる可能性が高い。しかし、人々がコンテンツを発見し、購入し、取り込む方法においてiTunesが果たす役割が小さくなったという事実は変わらない。
消費者はこの9年間で200億曲以上の楽曲をAppleから購入しているが、購入される場所は劇的に変化した。Appleによると、現在、iTunesダウンロードの3分の2はデスクトップではなく、「iOS」デバイスから実行されるようになっているという。同社が9月に「iTunes 11」を発表したときに言及したその統計は、iOSデバイスが登場したのが2007年中頃のiPhone発売以降であることを考慮すると、より印象深い。AppleはiPhone発売の4年あまり前に当たる2003年前半、iTunesにストアを開設している。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」