このため、研究会では「SIMロックについては原則解除することが望ましい」としながらも、第3.9世代や4世代と呼ばれる次世代の携帯電話端末でSIMロック解除を義務づけるよう検討すべきとし、2010年の時点で最終的な結論を出すべきとした。
ただしこのときには、単に端末が利用できるようになるだけでなく、それまで利用していたコンテンツやサービスも、キャリアを変えても利用できるようにすべきと指摘している。
SIMロック解除のメリットとしては、キャリア共通の端末の上に利用者が必要とするアプリケーションを購入し、利用するようになれば、あまり機能を必要としない利用者はシンプルな端末を低価格で手に入れられるなど、選択の余地が広がることが挙げられる。特に法人分野での高い需要が見込めるという。
また、これまで端末メーカーはキャリアごとに別の端末を製造する必要があり、開発費の高騰につながっていたが、SIMロック解除によりコストを下げ、独自の戦略で端末を展開できるようになるとした。
キャリアの通信回線を借りて携帯電話事業を展開するMVNOについては、新規参入により競争が加速されるとともに、利用者が新しい選択肢を得られることで市場が拡大する可能性があると期待を寄せる。
具体的には、固定通信と連携したFMCと呼ばれるサービスや、地域に密着した事業者の登場、法人市場の開拓などを挙げた。
ただし、MVNOが参入する上でいくつかの課題があると指摘。特にキャリアがMVNOの事業を阻害することがないよう、環境整備をする必要があるとした。
まず、キャリアが回線を貸し出す際の標準的な料金プランを明示するよう求めた。実際、PHS市場ではウィルコムが約款を策定、公表することで円滑な取り引きがなされているという。
このほか、キャリアの連絡窓口の公表、交渉に必要な情報公開範囲の明確化、総務省によるモニタリング、MVNOも利用できる端末プラットフォームの共通化などを挙げ、新規に周波数を割り当てる際には、免許取得事業者にMVNOへの回線貸し出しを義務づけるべきとした。
また、キャリアの課金機能や認証機能、位置情報の活用、プッシュ型の情報配信機能についても、MVNOが利用できるようにすべきとする。認証機能については、現在の端末認識番号に代わる新たなユーザーIDを2010年までに検討すべきとし、一例としてSIMカードを携帯電話以外の情報端末にも利用できるユーザーIDツールとして利用することを挙げた。
このほか、2007年度中に行うべきこととして、WiMAXへの対応やフェムトセルと呼ばれる新しい基地局への対応などを挙げた。
まずWiMAXについては、通信チップがPCに内蔵される可能性を指摘。現在、通信機能を持つ端末は財団法人電気通信端末機器審査協会(JATE)の認証を受ける必要があるが、2007年秋にモバイルWiMAXの周波数が割り当てられることもあり、2007年中に新たな仕組みの整備が必要とした。
フェムトセルは、無線LANルータの機能を持つ小型の携帯基地局。これを利用者が家庭に設置すると、屋内では携帯電話を無線IPフォンとして利用できるようになり、利用者が通話料金を下げられると期待されている。しかし現行の電波法では、利用者が勝手に基地局を設置することはできない。このため、2007年度末をめどに、フェムトセルを法律でどう扱うか決めるべきだとした。
このほか、携帯電話とさまざまな機器の連携を強化するための検討も2007年度中に開始すべきと提言している。
具体的な時期こそ示さなかったものの、検討課題としては端末プラットフォームの共通化、端末とネットワークの接続性やソフトウェアの相互運用性などを検証できる場の創設、携帯電話向けのウェブ記述言語の共通化、携帯端末のAPIの公開なども挙げた。
このようにさまざまな取り組みを示した上で、研究会ではまず、「モバイルビジネス活性化プラン(仮)」という名称で、具体的な施策のロードマップをすみやかに作るよう求めた。その上で、有識者で構成する「モバイルビジネス活性化プラン評価委員会(仮)」を開催し、進ちょく状況を1年に1度評価するとともにレポートを公表すべきとした。
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