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「技術はグローバルに、適用はローカルに」--東大 坂村教授、RFIDについて語る

2004/06/18 14:05
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 ユビキタス社会の実現には、RFIDの存在が欠かせない。だが、そのRFID技術の普及に向けて課題があるのも事実である。米国にて消費者保護団体のCASPIANが、RFIDの導入に対してプライバシー問題を軽視していると抗議したことも記憶に新しい。「技術だけを先に導入するのはよくない。導入にあたっての問題点は先に洗い出しておくべきだ。私が研究開発を進めるにあたっていつも念頭に置いているのは、問題点を解決したうえで望ましい技術を世間に普及させるということだ」。東京大学教授の坂村健氏は、都内にて開催されたBEA eWorld JAPAN 2004の特別講演にてこのように語った。

「ウーロン茶にタグをつけることもできる」と東大教授の坂村健氏

 坂村氏は、米国でプライバシー問題が叫ばれる理由について、「欧米におけるRFID導入の基本は、常時監視用であるためだ」と述べる。RFIDで常時監視されることによる心理的反発やデータ管理の問題、また電波による健康問題への不安などが原因となっているという。

 常時監視が導入の根元となることについて坂村氏は、米国独自の事情があることを説明する。それはシュリンケージ(万引きなどによる商品の減少)の被害だ。同氏はフロリダ大学の調査を基に、「米国でのシュリンケージ被害は、全商品の数量ベースで30%、金額ベースで売上の1.7%にあたる310億ドルにものぼるとされている。RFIDで常時監視をすれば、RFIDのコストがかかってもシュリンケージで失われる金額を削減できる」と、米国でのRFID採用の背景について説明した。

 いっぽう日本では、「流通過程の都合だけでRFIDを導入するにはコストが見合わない」と坂村氏はいう。日本でのRFID採用例について同氏は、「食品や薬品のトレーサビリティを管理し、消費者に安全な食品を届けたり薬品情報を提供するといった利用法がある。また、冷蔵庫や洗濯機などと連動して、モノとモノ同士が情報をやりとりする通信方法もひとつだ」と述べ、米国とは違った利用法が求められるだろうとした。

 また坂村氏は、RFID利用法が各国の事情で異なるため、電波や周波数もそれぞれの国に合ったものを採用すべきだとしている。特に米国では、UHF帯域を利用するためにアンテナやタグ自体も大きくなる点や、アンテナ接続コストが安くならない点などを指摘する。

 いっぽう日本では、常時監視が目的でないことや、携帯電話で利用している周波数に干渉しない帯域を考慮しなくてはならない点、電波法で強い電波が出せないとされている点などを考慮すべきだという。

 「最新技術はすべて米国からやってくるという考えは間違っている」と坂村氏は述べ、RFIDの利用方法まで米国に合わせる必要はないと主張する。「確かにRFIDは、米国では何十年も前から核物質の管理用に使われていた。そのため米国にはRFIDメーカーが数多く存在する。ただ、それらはすべてクローズドなテクノロジーであり、タグとリーダー/ライターがセットで売られていた。そこには競争もなく、タグの低価格化も意味をなさないものであった」と、坂村氏は米国におけるRFIDの歴史について指摘する。「日本には老舗のRFIDメーカーは存在しないが、技術進歩を前提にスーパーLSIメーカーがこの分野に多く参入した。オープンな規格を採用しているため、そこには競争も存在するが、その結果(日立製作所の)ミューチップなどは10円という価格が実現できている」(坂村氏)

 坂村氏は、同氏が代表を務めるユビキタスIDセンターの方針として、「技術そのものはグローバルでオープンなものを採用すればよい」としている。ユビキタスIDセンターでは、多くのメーカーが参入できるオープンプラットフォームを提供しており、この技術についてはアジア各国にて同様のセンターの開設が進むなど、技術がグローバルに採用されつつあると坂村氏。ただし、その技術の適用法に関しては「ローカリティを重視すべき」と述べた。

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