坂村健氏、RFIDとバーコードリーダー搭載のPHSを公開

藤本京子(CNET Japan編集部)2003年12月03日 16時35分

 YRPユビキタスネットワーキング研究所(UNL)は12月3日、ユビキタスIDセンター標準のIDタグであるucode仕様のRFIDと一次元バーコード読み取り機能を搭載したPHS携帯電話、「UC-Phone」を開発したと発表した。UC-Phoneは、来週11日より2日間の予定で開催されるTRON Showにて一般公開される。

 ucodeとは、ユビキタスIDセンターが標準としているモノを認識するためにつけられる識別子で、識別手段は接触通信(ICカードなど)、非接触通信(RFIDなど)、バーコードなどを幅広くサポートする。今回開発されたUC-Phoneにはucode仕様のRFIDとして、凸版印刷のTjunctionが搭載された。このUC-PhoneがPHS通信でコンテンツサーバに接続され、サーバから読み取ったモノの情報をPHS端末に表示するという。セキュリティ面では、ゲートウェイサーバとucodeサーバのTCP/IP上に、eTP(entity transfer protocol)というeTRONを利用した特別な暗号認証通信プロトコルを実装し、安全な通信を実現する。

 PHS回線を利用することについてUNL所長の坂村健氏は、「屋外でも構内でも手軽に利用できる。また、PHSの基地局は非常に安価で、例えば店舗の中に基地局を設置したい場合でも100万もかからないほどだ」という。「ユビキタス社会で重要なことは、簡単に安く導入できるということ。次世代携帯通信もそれはそれですばらしいが、次世代の基地局を個人レベルで導入することは不可能だ」(坂村氏)

バーコードの認定ベンダーも発表

UC-Phoneを手にするUNL所長の坂村健氏

 UC-Phoneには一次元バーコードリーダーが搭載されているが、世間では物流管理などに利用できる新たな方法としてRFIDばかりが注目されがちだ。この点について坂村氏は、「モノを読み取るための手段として、バーコードはすでに多くの場所で使われており、便利で安価なものでもある。たとえRFIDのコストが1円になろうとも、取り扱いやコスト面ではやはりバーコードが有利だ。ただしバーコードのセキュリティはRFIDに比べると甘いため、用途に合わせて使い分けるとよい」と説明する。

 今回ユビキタスIDセンターでは、ucode仕様のバーコード発行ベンダーとして、自動認識システムの総合メーカーであるサトーと、凸版印刷の2社を認定した。凸版印刷は、すでにucode仕様のRFIDベンダーとしても認定されている。認定ベンダーとなる基準は、ucode仕様に基づくバーコードを発行できる装置や体制を持っており、ucode仕様のバーコード発行における運用規定に基づく管理が可能であること。2社以外にも今後認定ベンダーは増える予定だという。

 両社は来年にもビジネスを展開させる予定で、サトー代表取締役執行役員会長兼CEOの藤田東久夫氏によると、同社のucode仕様バーコード関連における研究開発費は「来年度で1億円」だという。また、凸版印刷の取締役Eビジネス事業部長兼Eビジネス推進本部長、増田俊朗氏は今後のビジネス規模の見通しとして、「(チップのみならずリーダーライターなどの関連製品も含め)3年後に100億円規模のビジネスとなるだろう」としている。ただし、藤田氏、増田氏の両氏共に、市場が活発に成長して利益につながるまでは「10年程度はかかるのではないか」としている。

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