YRPユビキタス・ネットワーキング研究所は、ユビキタス環境とのコミュニケーションツールである携帯型ユビキタスコミュニケータ(UC)の開発に成功したと発表した。これまで同デバイスの試作品デモを何度か行ってきた同研究所所長の坂村健氏は、以前に公開していた試作品より約3分の1という大きさになった今回の開発品を披露し、「やっと実用レベルの大きさになった。単にチップを作っただけではユビキタス環境は実現しない。やはり道具が必要だ」と語った。
UCは、ユビキタスIDセンターの認定したucodeという標準タグを読み取ることができる装置だ。現在認定を受けているのは、日立製作所のミューチップ、凸版印刷のT-Junction、ルネサステクノロジや東京大学が共同で開発したAE45Xの3種類。これらチップに埋め込まれた情報をUCで読み取り、その情報を音声や画像でコミュニケータから得ることができる。
UCの使い道は様々だが、坂村氏は同デバイスで「モノ」「環境」「人」とのコミュニケーションが可能だと述べる。「たとえばモノとのコミュニケーションでは、大根に生産地などの情報を乗せたチップを埋め込み、大根の生産者が直接大根の情報を映像で伝えることができる。環境とのコミュニケーションでは、レストランの天井にチップを貼り付け、店に入った客がそこからメニューを見られるようにすることも可能だ。また、UCにはVoIP機能も入っているので、電話として利用することもできる」(坂村氏)
大根とUCを手にデモを行う坂村健氏 | |
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UCは、現在日本でRFIDの周波数として認められている2.45GHzと13.56MHzに加え、日本では認められていないが米国で使われているUHF帯を読み取ることも可能となっている。坂村氏は「周波数についてまるで私がアメリカと戦っているような報道が多いが、ひとつの電波に決める必要はないと考えている。タグを貼るモノによって使う周波数を変えたり、国によって変えたりするほうが合理的だ」という。
通信手段としては、赤外線通信、Bluetooth、無線LAN、PHSなど、あらゆる方法で通信できる機能を備えている。現在一般に使われているバーコードを読み込むために、CMOSカメラも搭載している。またセキュリティ機能にも力を入れており、「将来このデバイスが電子マネーとなったり家の鍵となることもあり得るので、バイオ認証が重要だ」として、指紋認証技術も採用している。
今回の小型化は、専用のASICを開発することで実現した。専用ASICを用意することで、それを量産し、コストも下がるという。「量産する量にもよるが、最終的にUCは数万円レベルで提供することが可能となるはずだ。UCを販売する企業には、戦略的に普及するような価格をつけてもらいたい」と坂村氏。
いっぽう、UCで読み取る標準タグの値段については、同じく生産量によって「10円程度まで下げることが可能となりつつある」としている。「当初は、個人や企業がまわりにあるモノを管理するために自分でタグに情報を入れ、それを読み取るかたちで使われるだろう。スーパーで売っている大根にタグを埋め込み、他人の入れた情報を読み取るような社会が来るのは、あと10年近くかかるかもしれない。だが、可能性は無限だ」(坂村氏)。UCは、12月に開催されるTRON Showにて一般公開される。
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