インテルは5月9日、“モノのインターネット(Internet of Things:IoT)”事業の取り組みについて説明会を開催した。5月14日から開催される「組込みシステム開発技術展(ESEC)」に出展する。
同社のIoTソリューションズ事業開発部 安齋尊顕氏によると「当社はIoTが次世代コンピューティングの主流になると考え、2013年にはIoT時代でも主役となるための組織改革を実行した」という。「ややもすると、バズワードとしてとらえられがちなIoTだが、きちんと投資対効果が出ているビジネストレンドとしてIoT対応を進めていく」(安齋氏)
インテルはIoTについて「目的ではなく、新しいビジネスを作るプラットフォーム」(安齋氏)ととらえている。IoTで新しいビジネスを作るプラットフォームとして欠かせないのが“インテリジェントな機器、インテリジェントなSystem of Systems、エンドトゥエンドのアナリティクス”の3つだ。
ここで言うインテリジェントな機器は、データを安全に取得、選別する領域、つまり組み込み向けCPUにインテリジェンスを付与すると表現している。インテリジェントなSystem of Systemsとは、センサなどの端末から送られるデータを共有するIoTのゲートウェイを指しており、レガシーなシステムと今後開発される新しいシステムの両方の環境を安全にサポートすることを目指している。エンドトゥエンドのアナリティクスでは、主にデータセンターにおいてIoTの仕組みが提供するメリットをしっかりと支えるようにしていくと表現している。
この3つのポイントを実現しているという米国での事例が紹介された。
リアルタイムで患者をモニタリングしているという病院の事例だ。患者のベッド上の位置、バイタルデータなどをサーバ上に集約して分析し、ナースステーションのモニタ、スタッフのモバイルデバイスに連絡することで異変をいち早く察知し、患者の病状の変化を効率的に管理する。この結果、医療や看護が的確に行えるようになり、病院の経営改革に結び付けたとしている。
IoTの仕組みを活用して地域の気象予報を詳細に展開している事例もある。この事例では、災害対策や電力の消費予測などに結び付けているという。スタジアムでのスポーツイベントなど多数の観客が集客するイベントがある場合、その場所を優先してモニタリング、リアルタイムに分析することで都市運営を安定的に実践しているとしている。
運送用大型トラックにセンサを搭載した事例では、加速度、GPSでの位置情報、運転状況などの複数をリアルタイムにモニタリングしている。渋滞情報を見越して、最適な道をナビゲーション、運転状況に応じて運転手に安全の確認などをフィードバックする機能を搭載したことで、ガソリンの使用量が7%改善したという。ガソリン使用量削減は二酸化炭素(CO2)削減にもつながり、トラックには一切変更を加えることなく節約につながることから運送会社にとってはビジネスメリットが大きな改善となったとしている。
IntelとSAPが共同で進めている実証実験では、スタジアムでの観客の満足度をIoTの仕組みで計測している。必要な箇所に設けたセンサによるモニタリングとSNSに上がる声をリアルタイムに解析し、例えば混んでいる入場ゲートが明らかになった時は他のゲートへの誘導、グッズの売上状況を見て人気のない商品を特別セールにするといった施策を取り、観客の満足度を変えられるかを模索している。現在は実験段階だが、スタジアムのような多数の観客が集まる場所で実施するには適したIoT利用となる見込みだ。
最も近い病院でも100キロ以上ある米国の地域では、救急車と救急患者、病院などをIoTで結んでいる。救急患者の搬送や受け入れに利用することで、米国で多い心臓病の救急患者の生存率向上を実現しているという。
バス停や駅に置かれたディスプレイにバスや列車の運行状況をリアルタイムに表示する仕組みをIoTで構築している。利用者にとっては、自分が利用するバスや列車がどこにいるのかリアルタイムで把握できるので、利便性が高いサービスとなるしている。
インテルではこうしたIoTを実現するための製品の第1弾としてIoTゲートウェイ開発キットを提供する。エネルギー業界の利用を想定した「DK 100」シリーズ、運輸業界向けの「DK 200」シリーズ、さまざまな業界で利用できる「DK 300」シリーズの3種類を用意している。価格は未定だが、数千ドル程度となる予定だ。
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