ライブドアとフジ、一転して和気あいあい…合意も具体的な戦略やビジョンはゼロ

別井貴志(編集部)2005年04月18日 22時30分

 2カ月以上の熾烈なせめぎ合いを続けて世間を騒がせたライブドア対フジテレビの闘いは、ようやく一応の決着がついた。ライブドアとフジテレビジョン、ニッポン放送の3社は4月18日、正式に資本参加および業務提携について合意したと発表した。

 3社は「フジテレビとライブドアは鋭意協議を重ねてきた結果、フジテレビの当初の経営方針であるニッポン放送の子会社化と、ライブドアが本来目指していたフジテレビおよびニッポン放送との業務提携関係の構築を同時に達成することが、フジテレビとライブドアにとって最善の経営判断であり、両社の株主の利益にかなうものであることを相互に認識した」と発表した。

 そこで、「ライブドア・パートナーズの全株式のフジテレビへの譲渡、フジテレビのライブドアへの資本参加およびフジテレビとライブドアとの業務提携を軸とする基本合意に至った」と説明している。

全員がにこやかに会見に臨んだ。左から、ニッポン放送社長の亀渕昭信氏、ライブドア社長兼CEOの堀江貴文氏、フジテレビ会長の日枝久氏、フジテレビ社長の村上光一氏

 この基本合意に加え、フジテレビは、別途ニッポン放送と「完全子会社化に関する基本合意書」を締結し、フジテレビがニッポン放送を完全子会社とする一連の取引について基本合意している。これらの基本合意に従って実施される一連の取引の検討に当たり、フジテレビおよびライブドアは、特に以下の4点を考慮する。

(1)フジテレビがニッポン放送の6月の定時株主総会の過半数の議決権を速やかに確保する

(2)フジテレビとライブドアとの業務提携関係を構築する

(3)ニッポン放送の少数株主の利益に配慮する

(4)フジテレビによるニッポン放送の完全子会社化のための株式交換を迅速に実施し、これによる両社の事業シナジーの早期実現を図る。また、フジテレビの既存株主の価値の希薄化を避ける

 具体的には(子会社化への手順や今後のフジサンケイグループの資本構成は3ページ目に掲載)、まずフジテレビがニッポン放送株の発行済株式数の32.4%を保有しているライブドアの子会社であるライブドア・パートナーズを670億円で5月23日に買収する。これにより、間接的な持ち分も含めてフジテレビはニッポン放送株を68.9%保有して筆頭株主となる。ライブドアは同17.6%と第2位の株主。

 そして、フジテレビはライブドアが5月23日に実施する440億円(1株あたりの発行額は329円、発行株数は普通株1億3374万株)の第三者割り当て増資を引き受け、ライブドアの発行済株式数の14.61%(増資後は12.75%)を保有する。この保有株は、2007年9月末まで基本的に保有し続ける。増資により、ライブドアの発行済株式数は10億4900万株(増資前9億1532万株)となり、資本金は808億8400万円(同641億6600万円)となる。また、増資後のライブドアの株主構成は、筆頭株主が社長兼CEOの堀江貴文氏で21.06%保有、第2位がフジテレビで同12.75%、第3位がリーマンブラザーズ証券で同8.37%となる見込みだ。

 さらに、ニッポン放送を加えた3社で業務提携に向けた「業務提携推進委員会」を設け、すでに候補が決まっている数名ずつのメンバーが最低1週間に1度協議を行う。放送と通信、インターネットの融合に関連した個別の業務提携案件を探り、半年を期限に何らかの結論を出す。ただし、「今日は具体的な話ができない」(フジテレビ会長の日枝久氏)、「具体的な内容はまだ話せない」(堀江氏)と、まったくの白紙状態をにおわせた。

 こうした一連の流れの後に、ニッポン放送をより迅速に完全子会社化するにあたり、ニッポン放送が自社株を1株あたり6300円で公開買い付けして償却すると共に、フジテレビは産業活力再生特別法を活用し、1株あたり6300円の金銭交付により、フジテレビとニッポン放送株の簡易株式交換を実施する予定だ。産活法の申請は5月下旬に行い、認定は6月中旬、株式交換は9月1日を見込んでいる。

 産活法を申請したのは、フジテレビとライブドアでニッポン放送株の約86%を占め、さらにはフジテレビの完全子会社となる予定なので、早晩ニッポン放送は上場廃止になる可能性が高く、少数株主の利益を守るためには早期の換金機会を提供することが良策と考えたためだ。

当初よりも高い1780億円をかけて、フジテレビはニッポン放送を完全子会社化する

2005年9月1日に晴れてフジテレビが完全親会社、ニッポン放送が完全子会社になる予定だ

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