松下電器産業は4月6日、都内にてIT経営革新プレスセミナーを開催した。同社が3年前より「創生21計画」の下で推進しているIT経営革新の取り組みの成果を報告するとともに、2004年度から始まる新たな中期計画「躍進21計画」の方向性について説明した。
創生21計画において、同社が過去3年間に投資した額は1153億円。松下電器産業IT革新本部副本部長の牧田孝衛氏によると、成果は見えてきたがまだ投資回収にはいたっておらず、「現時点での投資の成果は、金額にして836億円」だという。しかし同氏は、「投資に対する効果は投資後すぐに出るものではない。来年には回収できるはずだ」と説明する。
松下電器産業IT革新本部副本部長 牧田孝衛氏 |
具体的にIT革新で同社が得た成果の例として牧田氏は、SCMでまず製造販売における事務処理を効率化し、製造、販売、在庫情報を共有するなどして、これまで月単位のサイクルで製造販売していたものを週単位にすることができたことをあげる。製造のリードタイムも短縮され、「国内工場の製造リードタイムはすべて4週間以内を実現できた」と牧田氏。特にPanasonicブランドの生産においては、国内では2週間のリードタイムで製造が可能となっている。いっぽうのNationalブランドは、国内では3週間のリードタイムだ。ただ、海外工場ではまだリードタイムが長く、4週間を超えているものもあるため、SCMの第2段階として海外での変化対応力を改善し、リードタイムを国内並みに短縮させたいとしている。
SCM以外にも松下では、同社の戦略的商品に対して開発プロセスの革新を行ったという。生涯収支を可視化した意思決定や体系的なプロジェクトマネジメントの導入、シミュレーションによる回路設計、設計・製造間での情報共有などで、「昨年9月1日に発売した薄型テレビは、13機種の一斉発売が可能となった」(牧田氏)という。このような開発マネジメントにより、ワイド液晶テレビLX10では開発着手から投資回収までの期間が従来より45%短縮でき、市場投入までの時間も25%短縮できたという。同社は今後、ノンフロン冷蔵庫や携帯電話などでも同様の取り組みをはじめるとしている。
2004年度からの躍進21計画では、おもにマネジメント力の強化と松下グループ全体の情報基盤の最適化でIT革新の成果を最大化することと、世界レベルでナンバーワンとなるためにプロセス革新の取り組みを強化するという。この計画を実現するための投資額は、2004年から2006年の累計で約1200億円。投資の内訳は、SCM関連に450億円、商品企画や開発、生産など商品化に関する部分に180億円、システム統合・再構築に140億円などとなっている。
これまでのIT革新では全体の48%しか投資回収が実現していない同社だが、この原因について牧田氏は「経営改革とIT革新が一体化していないためだ」としている。失敗するIT革新の根元は上流工程にあると同氏は指摘し、「上流工程から経営とITが一体となって取り組まなければならない。でなければ、IT革新プロジェクトが途中から単なるシステム構築プロジェクトとなってしまう」という。今後投資回収率を向上させるために、同社では上流工程重視のプロジェクトマネジメント手法を導入し、経営戦略と一体となった意志決定の仕組みを強化するという。
また、世界レベルでナンバーワンとなるためには、これまで注力しきれなかったSCMのグローバルレベルでの強化や、中国拠点でのIT基盤を強化するとしている。「中国は、売上に対する投資比率がこれまで低かった」と牧田氏は述べ、過去3年間と今後3年間との投資額はほぼ同額だが、今後は海外に向けた投資を重点的に行っていく考えを示した。
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