さて、今回は携帯端末向けマルチメディア放送サービス等についてです。初めて聞いた方も多いと思います。地上アナログ放送が2011年7月24日に停波(終了)した後、その周波数帯域が空くことになります。
その跡地の一部を携帯端末向けマルチメディア放送サービスとして与えられることになりました。2007年8月から懇談会が始まり、08年7月に方向性を踏まえた報告書が公表されました。
では、どんなサービスが実施されるのでしょうか。 実現する放送は、移動受信を前提とする携帯端末に向けた「放送」の充実の要請により、主に携帯電話を対象にしたサービスです。サービスタイプとして、全国向け放送と地方向け放送の2種類の放送があるようです。
しかし、放送といっても有料放送を行えるようにすることが不可欠となっており、放送の形態も「映像」「音声」等の組み合わせや、「リアルタイム」「ダウンロード」といった提供形態を柔軟に選択可能とするとも記載されています。
いわゆる片方向だけの放送サービスではなく、有料かつ選択可能なマルチメディアサービスを実施するようにとのことです。
この周波数帯に興味を示している参入プレイヤーは、サービスタイプによって2つに分かれています。
まず、全国向け放送を目指しているのが、マルチメディア放送企画LLC合同会社(フジテレビ、伊藤忠商事、NTTドコモ、スカパー、ニッポン放送)とメディアフロージャパン企画(KDDI、クアルコム)、モバイルメディア企画(ソフトバンク)の3事業者です。
まさに携帯電話キャリアがそれぞれ出資した事業者が新しい携帯電話端末放送サービスに向けてしのぎを削ることになります。これはモバイルWiMAXの免許申請時と同じような状況といえるでしょう。ちなみに免許を与えられる事業者数は2〜4とまだ曖昧な状況です。
もうひとつは、地方向け放送を目指す事業者で、現在試験放送を実施しているデジタルラジオ事業者がこの帯域を新天地として選択し手を挙げています。
現在KDDIを中心にデジタルラジオ対応端末が普及していますが、2011年には利用できなくなる可能性があります。在京AMラジオキー局、地方AM局、FM局やNHKがこの帯域に興味を示しています。
ここではブロック免許制が導入される予定で、懇談会案では全国を5〜8つのブロックに分割するプランが例示されています。
そして、それぞれのブロックに複数免許が与えられる予定です。ただしブロックは国が定めるのか事業者の申請に委ねるのか2通りが記載されています。
この新しい帯域で興味深いことは、地上波で初めてハード、ソフト分離が実施されようとしている点です。衛星放送では受託(衛星管理)、委託(放送提供)という仕分けが行われていますが、地上波では送出設備(ハード)と番組供給(ソフト)は一体となっています。衛星と違って地上波は中継局を多数設置しなければなりません。ハード事業者をソフトと分離することが経済合理的にどうなのでしょうか。新たなビジネススキームが期待されます。
さらに、ここでは2010年から施行されるであろう新情報通信法を先取った制度が実施されようとしています。このことがきっかけとして未来の放送に大きな影響を及ぼすことになるかもしれません。
ワンセグとは違った携帯端末向け放送が始まることで、携帯電話の中でも多チャンネル映像双方向サービスが実施されることになります。益々複雑になる携帯電話サービスをユーザーが受け入れるのにはハードルが高そうですね。
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