今回もApp Storeの動向に詳しいYaCC氏(4001field)とともに、iPhoneにまつわるビジネスについて考えていきたい。
まずは、iPad発表前にお伝えした前回とその後の振り返りから。前回はiPhoneとApp Storeで電子書籍系のコンテンツがどのような動きをしているかをまとめた。
当初より予測されていたiPad向け電子書籍の出版プラットホーム「iBooks」と、電子書籍カテゴリーの拡大について関係性をにらんでいたが、iBookstoreの仕様からは、AmazonのKindle向けプラン(著者・編集者の取り分が売上げの70%になる)のような、出版業界の構造を揺るがすインパクトのある提案は未だない状態だ。
今後は変わるかもしれないが、当面iBookstoreで売られるのは、これまで書店流通している書籍と言うことになりそうだ。一方で、ファッション雑誌「VOGUE」などで知られる米コンデナストといった雑誌や新聞を抱える企業が、iPad向けのアプリケーションで雑誌を購読する仕組みを提供するとアナウンスしている。iPadで「読む」という行為にまつわるビジネスは、iPad登場までにまだいろいろな取り組みが出てきそうだ。とても楽しみである。
日本では「iPhone for everybodyキャンペーン」によりさらにiPhoneの普及が広がっている。電気通信事業者協会(TCA)によれば、ソフトバンクモバイルの2010年1月末時点の純増数は18万5000件。推測すると、出荷したiPhoneは1カ月間で約15万台とも言われている。1月31日で終了したPhone for everybodyキャンペーンに変わり、2月1日からは「W-Fiバリュープラン(i)」がスタート。パケット定額料金は段階制から4410円固定に変わったものの、everybodyキャンペーンと同様にiPhone 3GS 16Gバイトが実質0円で手に入る価格は継続となっている。敷居の低さは、引き続き拡大するスマートフォン市場の競争で優位に働くことになりそうだ。
4月にドコモからソニー・エリクソン製Android端末Xperiaが、6月にはauからWindows phoneとAndroidスマートフォンがそれぞれリリースされる予定となっている。すでにXperiaにじっくりと触れてみたが、端末の基本性能の高さ、再設計されたコミュニケーションデザインなど、非常に魅力的な1台だ。
しかし、これらの端末はいくらで提供されるのかが気になるところだ。端末価格、基本料金とパケット定額を合わせた価格を、iPhoneにどれだけ近づけられるか、あるいはiPhoneより下回ることがあるのか。現在のソフトバンクが設定するiPhoneの価格競争力が、いかに高い状態にあるかがわかる。
月次で発表されているAdMob Mobile Metricsでは、アプリ活用のデータが上がってきている。これは、プラットホーム別に、1カ月あたり1人何本のアプリをダウンロードするかを調べたものだ。
これによると、iPhoneは毎月8.8本、iPod touchが12.1本、Android 8.7本、WebOS 5.7本という数字が出てきた。電話機能がないiPod touchが12.1本と頭一つ飛び出ている以外は、iPhone、Androidともに、毎月9本弱のアプリをダウンロードしている傾向は、共通している。しかしこれが課金アプリとなると、少し変わってくる。
毎月1本以上の有料アプリをダウンロードしているユーザーを調べると、iPhoneは50%と半数、iPod touchは35%、Android 21%、WebOS 24%と、iPhoneが圧倒的に多い結果となった。今後各社がスマートフォンをリリースする際に、この有料アプリの数字を左右するのは課金プラットホームだ。
日本国内において、iPhoneはiTunesのアカウントを使って有料アプリを購入するが、これを利用するにはクレジットカードか、プリペイドのiTunesカード/App Storeカードが必要だ。
iTunesアカウントは、これまでのiPodユーザーも音楽を購入する際に使ってきたものと同じアカウントで利用できる。カード利用への抵抗感やiTunesカードの認知度もあるが、他の課金プラットホームよりはまだ身近な存在と言える。
他のプラットホームでは今後、 OS独自のマーケットとキャリアのマーケットの混在などが考えられ、ユーザーにとってどれだけ使いやすい仕組みになっていくか、見守りたいところだ。
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