2010年のCESでの関心事は、タブレット型端末(PCベースとAndroidベース)、3Dデジタルテレビ、そして電子書籍の話題が中心となった。また日本国内でiPhoneを擁するソフトバンクモバイルに対抗するNTTドコモは1月21日、ソニー・エリクソンのAndroid端末「Xperia」を発表し、2010年4月から販売するとしている。
そんな年初の動向の中で、米国時間1月27日(日本時間1月28日未明)、アップルのプレスイベントが予定されており、何らかの新型デバイスや新型iPhoneなどを発表すると見られている。スマートフォンビジネスや、今日テーマにする電子書籍のトレンドが、今回の発表でいくつかのことが変わってしまうかも知れないが、発表前の原稿として、現状を見ていこう。
2009年はよく知られている雑誌の休刊が相次ぎ、最後まで出版不況がささやかれる1年となった。しかしApp Storeの中での数字は逆の方向性を示し始めている。
「日本国内のアプリケーションの月間ダウンロード比率で、2009年11月に調べた割合はゲーム18%、電子書籍14%でしたが、2009月12月にはゲームが17%と1ポイント落とし、電子書籍は16%と2ポイント上がりました。電子書籍がApp Store内で増加し始めていることを示しています」(YaCC氏)
ご存じの通り、App Store上でアプリをリリースするにはアップルの審査を受ける必要がある。通常2週間と言われていた審査期間に対し、最近電子書籍のカテゴリーは3〜4日で申請が通る状況が続いている。
その理由の1つに、Androidマーケットが活性化し始めていることがありそうだ。
アップルはアプリ数15万本、ダウンロード数30億本という数字を発表している。Gartnerのスマートフォンのアプリ市場調査を元にしたArs Technicaの試算によると、App Storeの売り上げはモバイルアプリケーション市場全体の99.4%を占めるという。しかし開発コミュニティと対応端末数が共にiPhoneを上回るペースで急進が見込まれるAndroidマーケットに対抗するため、審査を早めていると見ることができる。
一方もう1つの理由に、アップルが新たな電子書籍ビジネスをスタートさせる布石を打っている可能性もあるが、これはアップルのプレスイベントの結果を待とうと思う。
次の話題は、日本市場の特殊性についてだ。特に米国との比較で、日本のモバイルアプリケーション市場について見ていこう。端的にわかりやすい、日本のアプリ市場の特殊性をYaCC氏に聞いた。
「Global Appsという全世界のApp Storeの売上げ状況が見られるアプリケーションを使うと、日本も含む世界でどんなアプリが売れているのか、知ることができます。海外の有料アプリ市場では、ゲームが主体で全体の約60%を占めている点が特徴です。一方日本では、ユーティリティ、仕事効率化、リファレンスが29%を占めます。これらのカテゴリーは米国ではわずか7%しかありません」(YaCC氏)。
ゲーム主体の米国に対し、日本のApp Storeの動向は特殊だと指摘している。米国の空港で飛行機を待っていると、日本人以上に米国人の方がスマートフォンに対して『投資』と捉えて仕事の効率化のツールとして付き合っているように見えるが、電話とメール主体。アプリ市場を見ると日本の方がアプリによって効率化を進める姿勢が見られると言えそうだ。YaCC氏はさらに続ける。
「さらに特殊なのは、数千円もする辞書系アプリがランキングにどんどん入ってきているという点です。大辞林・大辞泉などの国語辞典を始めとして、最新医学大事典は1万6000円の価格に関わらずトップセールス34位に入っていました(インタビュー時)。海外からすると、あり得ない現象です。もともとモバイルコンテンツを買うことに慣れていると言うことでしょうか?」(YaCC氏)。
確かに日本人は10年前にiモードから始まった情報サービス月額課金、着うたの1曲ずつのダウンロード、そしてソーシャルゲームやSNSなどのデジタルアイテム購入と、単位は細かくなってきたが、モバイルコンテンツ課金を使ってきている。
東京ガールズコレクションなどでは、ファッションショーのランウェイでモデルが着ている服をその場でケータイから買う熾烈な争いが毎年見られている状況も伝えられる。50円のアバターの服から、3万円以上の自分の服まで、ケータイで購入していることは確かだ。
また販売店の店頭の売り方も関係してくる。例えば専門辞書を10冊揃えた電子辞書は定番の商品であるが、iPhoneなら必要な辞書だけ購入すれば良くなり、常に最新の内容に変えられる上、ケータイと電子辞書を1台にまとめられ、価格も安くなる。本当は電子辞書を買いに来た人が、iPhoneを買って帰るパターンも透けて見える。
そしてもう1つの要素はまじめさだ。
「日本の特殊性は、iPhoneユーザーのまじめさから来るのではないかと思います。海外では100位までがほとんどゲームですが、日本では日常的に英単語アプリや辞書が売れています。また辞書に限らず、季節性が表われてきているのも最近の傾向です。たとえば、クリスマスならサンタ関連の写真合成アプリ、大学入試ならセンター試験対策アプリ、就職シーズンならSPIテストのアプリといった感じで日本人の勤勉さが見れる反面、一方では、最近グラビアなどアダルト系が増えてきている傾向も見られるようになりましたが」(YaCC氏)。
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