iPhone for everybodyキャンペーン、iPhone 3GS発売と、iPhoneの継続した「波」が続いた2009年のモバイル市場。2010年はAndroid端末も多数参入すると見られるスマートフォン市場、先行するiPhoneとアプリビジネスの現状を、YaCC(4001field)氏とともに浮き彫りにしていく。
2009年を終えるタイミングでのiPhoneユーザーとはどんな人なのだろうか?IMJモバイルが10月に発表した調査では、iPhoneの初期ユーザーの6割が2台持ちをし、かつiPhoneともう1台のケータイにdocomo端末を持っているユーザーが33%という。現在2台持ちの割合はもっと低くなってきていると思われるが、より通信にお金をかけられ、リテラシーの高いユーザーからiPhoneユーザーが形成されたことがわかる。
しかしこの傾向も変わり始めたという。
「AdMobの調査によると、20代後半から40代後半で市場の60%を占めています。最近18歳〜24歳は全体の20%を占めるようになってきました。iPhone for everybodyキャンペーンによって価格が下がったこともあり、個人のケータイとしてiPhoneを選ぶ学生がものすごく増えてきたと見ています。
青山学院大学の学部でiPhoneを導入しましたが、これからさらに導入していく大学・専門学校が増えてくるでしょう。高校でもiPhoneを使った授業を実験的に始まっていますし、大阪府では橋本知事が『小学校にはケータイを持ち込むな!』と言った一方で、iPhoneと教育の関係を調査してもいます」(YaCC)
現在、ソフトバンクモバイルやその販売代理店がターゲットとしてフォーカスしているのは、学生と女性だという。学生にとっては価格が、女性にとってはそもそものPR不足がそれぞれ障壁になっていたとYaCCは見ている。それをiPhone for everybodyキャンペーンにより、まずは学生への障壁を取り除いた。
次は女性に対していかにiPhoneを知ってもらうか、である。
「初期のiPhoneユーザーの男女比率は9対1と男性が圧倒的に多かったのですが、販売代理店によると最近の販売比率は7対3程度まで女性が増え始めています。ソフトバンクは、2009年は女性誌とのコラボレーションや女性向けアプリのPRに力を入れていました。周りに増え始めると、口コミが増え始め、女性ユーザーの増加が顕著になってきたのが現状です」(YaCC)
iPhoneのユーザーの裾野の広がりは、App Storeで展開されるビジネスの活性化を誘うのだろうか。次はアプリを取り巻く環境について考えていく。
iPhoneの大きな魅力の1つはアプリのインストールで自分が欲しい機能を手に入れられる点だ。これまで搭載するハードウェアによって差別化されていたケータイに対して、ソフトウェアで進化が可能になったプラットホームが、iPhoneの特徴のはずだ。
その窓口となっているのが「App Store」。パソコンのiTunesやiPhoneの中にも用意されており、いつでもアプリを探してダウンロードができる環境が整えられている。アプリの数も2009年11月には10万本を超えた。
ITジャーナリストの林信行さんは、App Storeの現状について、「Googleが出始めた頃、検索窓にキーワードをおそるおそる入力したら、なんでも結果が表示されてすぐに情報にリーチできた。それと同じ状況が今のApp Storeだ。App Storeでまさか、と思って検索するとアプリがリストアップされ、すぐ体験へとリーチできる」と表現する。
非常に充実し始めたApp Storeの存在感に注目が集まる一方で、アプリのダウンロードはおろか、App Storeにアクセスすらしないユーザーもいる、と4001fieldのYaCCは語る。
「ライトなユーザーはApp Storeのランキングすら見ないんです。iPhoneそのもので満足して、ファッションの一部として身につけていると見るべきでしょうか。すでにコアユーザー比率は30%くらいまで上がっていますが、残りの70%をいかにApp Storeへ誘導するかは、今まさに直面している課題だと思います」(YaCC)
App Storeへのリーチを高めなければ、有料アプリの販売やアプリ内課金などのビジネスを成立させることなど不可能に近い。2010年の課題は、いかにiPhoneのビジネスを立てていくか。そのポイントとなるのが、アプリを知る方法の多様化だ。
リテラシーの高いユーザーは、たくさんアプリをダウンロードし、その見つけ方もApp Storeに加えてアプリ内の広告やTwitter、ウェブメディアなど多方面にアンテナを張っている。一方ライトユーザーは、アプリ内広告はおろか、ウェブメディアからの反応も薄い。
この傾向に加えて、App Storeの飽和状態により、App Storeの検索やGeniusによるマッチングを駆使しても、アプリ開発者からリテラシーの高いユーザーへのリーチも難しくなってきた。
「ちょっと前まではちゃんとしたモノを出せばランキングに入ってきたが、最近は1日600個の新しいアプリがリリースされるマーケットです。キチンとした戦略がないとまず売れないし、見つけてもらうことすら難しいのが現状です」(YaCC)
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