新たな広告媒体として注目されるオンラインゲームの現状と課題について、オンライン広告の代理店であるアドウェイズの取締役COOである松嶋良治氏が、10月25日に開かれた「CNET Japan Innovation Conference 2007」にて講演した。
オンラインゲームフォーラムの調査によると、国内におけるオンラインゲームの登録者は2006年に累計で約4200万人に達し、市場規模は1000億円を超えている。このため、広告業界は広告媒体としてのゲームに注目しだした。ゲーム内広告の市場規模は、米国では2006年が3億4600万ドル(約415億円)、2011年には9億6900万ドル(約1160億3000万円)に成長すると予測されている。
一方、日本市場の規模は2006年で3〜5億円程度に過ぎない。松嶋氏は「日本のオンラインゲーム業界は、ゲームパブリッシャーとゲームサイトの運営者が同じである場合が多く、ユーザーへの課金で成り立っているのが現状だ。ゲームの世界観を重視するため、ゲーム内広告に踏み込むのにためらいをもっている。一方、広告主側も実際に取り組むのはまだ難しいと考えている」と説明し、日本でゲーム内広告を浸透させる課題として、広告システムの整備を挙げた。
松嶋氏によれば、現在ゲーム広告として使われている手法には大きく5種類があるという。1つは米国で主流になっている、ゲーム内に広告枠を設置するインゲームズアドと呼ばれる手法だ。これは、広告看板を設置しやすいスポーツゲーム等で導入されるケースが多い。次いで、広告主の商品やサービスをゲーム内のアイテムやキャラクターとして設置するプロダクトプレイスメントという手法があり、ロールプレイングゲームに適している。
3番目がステージをクリアした後、次のステージに移るまでの間に表示されるスポット広告で、システムが簡単なため導入しやすいのが特徴だが、ゲームならではの特性が活かせていないため、実際に導入される例は少ないという。
このほか、広告主の商品や広告を盛り込み、商品や企業、ブランドのプロモーション用に作られるアドバゲームや、商品の認知を高めることを目的として、イベント発生的にゲーム内に商品を展開するインゲームズプロモーションがある。
オンラインゲームの特徴として松嶋氏は、「プレイヤーのほとんどが無料で楽しんでいる」と指摘する。これは課金収入が主流のゲームパブリッシャーにとって難しい課題となっている。同氏は「ゲーム内広告は広告費によって無料ユーザーから間接的に収益を上げることが可能な手段である」と説明し、ゲームパブリッシャーにとって有益性が高いと強調した。
ゲーム内広告普及のネックとなるのは、テレビの視聴率やウェブ広告のインプレッションにあたる広告指標が確立されていない点だ。
アドウェイズのパートナーの代表として登壇した、ハイファイブ・エンターテインメント代表取締役社長の澤紫臣氏は「オンラインゲームは、プレイ中にバナーをクリックするとゲームが中断されるといった課題があるので、クリックレートのような発想で広告効果を図るのは適正ではない。オンラインゲームにはリピート性や滞在時間の長さ、チーム性、リアルタイムのコミュニケーションといった特性があるので、こういった点をふまえた広告指標を確立していくべき」とした。
また、同じくアドウェイズのパートナーで、広告ベースのモバイルゲーム「PromisedLand」を運営するデクスターの代表取締役、日根弘樹氏は「モバイルオンラインゲームは、情報の量や質を深く伝えることができる媒体。そういった点を評価する指標を作ってもらいたい」と、代理店であるアドウェイズに対して要望を語った。
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