2008年6月27日、Googleが検索連動型広告(アドワーズ広告)において、直前の検索行動のデータを応用した行動分析型ターゲティングのテストを行っているというニュースがNew York Timesに掲載されました。
Googleは、2007年からユーザーがコンバージョンに至った直前の検索行動を分析、そのデータをターゲティングに応用するテストを行っていた。これまでの結果を踏まえてGoogleの担当者は、「直前の分析だけでは十分と言えない。今回、コンバージョンの2、3回前までの検索行動まで分析範囲を広げた」と語っている。
「Google Tries Tighter Aim for Web Ads」より
これまでGoogleで「手数料」と検索した場合には、直前の検索行動とは無関係にさまざまなジャンルの「手数料」というキーワードを含むリスティング広告が表示されていました。
しかし、2007年の「行動分析型ターゲティング」の導入により、同じように「手数料」と検索した場合、直前に「FX」で検索を行っていれば「FX」の「手数料」に関連する広告が表示され、それが「株」で検索した後であれば「株」の「手数料」に関する広告が表示されるとようになったのです。
この「直前の検索結果を応用する」という仕組みは、昨年からテスト導入されていましたが、今回のニュースによると、さらにその範囲を2、3回前まで拡張したとのことです。この変更によって、Googleはユーザーの検索行動の一連の流れをより詳細に分析、把握し、その結果、さらにユーザーにとって関連性の高い広告を的確に表示していけるようになると思われます。
ユーザーにとっては、これまでに以上に自分が必要としている情報に近しい広告が表示されるようになるため、大変メリットのある仕組みだといえます。
一方、広告主にとって、このGoogleの行動分析型ターゲティングへの進化は、どのような変化をもたらすのでしょうか。まずは現在のリスティング広告の最適化手法を整理した後、今後変化がもたらされるであろうポイントについて考察します。
リスティング広告を日々運用している立場としては、現在、リスティング広告で効果を上げるための大事なポイントは「検索キーワードと広告の適合性」であると考えています。
これはユーザーが検索するキーワードに対してより適合性の高い広告を表示するように設定し、「クオリティスコア」と呼ばれるGoogleアドワーズ広告における重要な要素を向上させながら、高いコンバージョンレートをキープしていくことで費用対効果が良くなるという考え方です。
では検索キーワードと広告の適合性を強化するために具体的にどんなことをしていくのか。
(少し専門的な話になってしまいますが)、まずは特に重要と思われる特定キーワードで検索した時にのみ広告表示する「完全一致」を設定した上で、登録するキーワードを幅広く網羅していきます。
次に、個々のキーワードの広告クリック率などを指標にして、どの広告文が最もユーザーに支持されるのか、というような仮説検証を繰り返して最適化していきます。
この「完全一致でキーワード網羅→個別に仮説検証→適合性最大化」という手法は、現在、Googleアドワーズ広告だけでなく、Overtureスポンサードサーチなどリスティング広告攻略における王道パターンのひとつとなっています。
しかし、今後、Googleの行動分析型ターゲティングのような「ユーザーの検索行動を把握して、それに応じた広告を配信する」という仕組みが普及していくと、この「完全一致で網羅→個別に仮説検証→適合性最大化」という手法だけでは対応しきれなくなっていくことが想定されます。
行動分析型ターゲティングでは、「完全一致」で設定された広告は表示されないと予想される。
「完全一致」という設定では、その名の通り、検索されたキーワードと広告主の入札しているキーワードが完全に一致しない限り広告は表示されません。従って、行動分析型ターゲティングが行われている際に表示されるのは、おそらく「部分一致」で設定された広告のみになると思われます。
ちなみに「部分一致」設定とは、登録キーワードを部分的に含んでいるという意味合いで解釈されがちですが、それだけに留まらず、登録キーワードの意味合いまで解釈し、それに触れると表示するマッチタイプです。
つまり、登録ワードを含んでいなくても、Googleが意味合いが近いと判断すれば広告表示がされます(英語の「Broad match」と表記の方がしっくりきます)。
「部分一致」での広告表示ロジックの特定が困難である。
また、その「部分一致」で設定したとしても、“どのような流れで検索されると、どのキーワードに設定した部分一致の広告が表示されるのか“というロジック特定が非常に難しいため、個別の仮説検証による適合性最大化が難しいであろうと予想される。
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