動画コンテンツが本格化してきた。4月に入ってからも、LINEの森川元社長が動画メディアの新会社を設立することや、アイスタイルとエキサイト合同による女性向け動画広告配信の新会社が発表された。
ネット利用状況を調査するビデオリサーチインタラクティブも、PCベースの動画広告統計サービスを4月から開始した。
2014年の動画広告市場は前年比2倍の300億円強。 2017年には2013年の約5.6倍の880億円に達し、そのうちスマートフォン 向けがおよそ半分と予想されている(サイバーエージェント調べ)。
この大きな潮流で、広告市場のさらなる活性化が期待される。結構なことだ。
しかし、市場の伸長もさることながら、今年からは、動画コンテンツの「役割」や、その特性を生かした「戦略」にもっと視点を移すべきだろう。
ここで注目したいのが、2014年にGoogleが提唱し始めた 「Hero, Hub, Hygiene Content Strategy」、通称「HHH戦略」と呼ばれる考え方だ。
動画コンテンツをその特性や役割から3種類に分け、目的に応じたコンテンツ開発や連携を促すものだ。
「ヒーロー(Hero)」は、一言でいえば「ブチ上げ動画」。 大きな話題性があってたくさんの人が見るようなもの。それだけ巨額のコストもかかる。 スーパーボウルで流されたりカンヌを獲るようなイメージだ。
マス広告のイメージに一番近いので、日本で「バイラル動画をつくりましょう!」となると、最初からこのイメージで突き進むことが多いように思う。
例えば、サントリーの「忍者女子高生」あたりがこれにあたるだろう。
「ハイジーン(Hygiene)」はヒーローの真逆で、言ってみれば「地味なお役立ちコンテンツ」。目的を持って検索をした結果たどり着くイメージで、例えばノウハウ物だったり、カスタマーサービス情報など。
大きな注目を集めるものではないけれど、逆に365日ニーズがあって求められているものだ。
例えば、KDDI「Microsoft Wordを利用する(モバイル編)」みたいなコンテンツがこれにあたる。
そして最後に「ハブ(Hub)」。ある種ヒーローとハイジーンの間を“埋める”役割だともいえ、僕はここが一番重要になると思っている。
ハブの特性は、ある程度の継続性を持つこと。ヒーローほど巨額のコストもいらず、そこまで注目されなくてもいい。
しかし、ハブほど地味でもなく、新しい視点や面白さには溢れている――こんな感じだろう。そして、いわゆる「YouTuber」が生み出すコンテンツは、多くの場合はここにあたるのだ。
はじめしゃちょーの「はじめ対PDS YouTube頂上決戦」などを始め、YouTuberと企業のコラボのほとんどは「ハブ」の役割だといえる。
僕は、この「ハブ」がもっともPRの役割に近いという解釈をしている。「ヒーロー」がマス広告であり、「ハイジーン」が店頭だとするならば、マーケティングにおけるPRの役割はまさにハブである。
定常的な「空気」をつくってマス広告が効きやすい状態をつくる。マス広告や店頭だけでは伝わらない商品の魅力を伝える。その時々の時勢や関心に合わせて情報を発信する。
そして、マス広告ほどお金はかからないけれど、だからといってタダでできるものでもない――こんな考え方だ。
だから、企業はユーチューバーとはPR発想で連携すべきなのだ。「動画」が持つ可能性はとてつもなく大きい。
だからといって、やみくもに導入しても成果は上がらない。それぞれのコンテンツ特性が持つ「役割」を理解することが大事であり、それは結局、これまでのマーケティングにおける広告やPRや店頭施策のそれぞれの役割を理解することに限りなく近いのである。
この記事はビデオリサーチインタラクティブのコラムからの転載です。
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