Dell CEOのKevin Rollinsは今、Michael Dellの影から抜け出し、スポットライトの中に歩み出ようとしている。
社名の由来となった創業者がCEOの座を退き、代わりにRollinsがPC業界の巨人Dellのトップに就任したのは半年前のことだ。このわずかな期間に、IBMは事実上PC事業から撤退し(Rollinsによれば「白旗を揚げて」ということになる)、Hewlett-Packard(HP)はPC関連部門を再編し、そしてApple Computerは財布にやさしいMacとiPodで再び世間の関心に火を付けた。
RollinsはDellの「顔」であることに馴染んだという一方で、自分には有名になりたいというエゴもなく、またそうする必要もないと主張する。Microsoft会長のBill GatesやMichael DellなどのIT富豪の仲間入りをしたいかと問われても、「あれは独特な集団だ。憧れたこともない」と素っ気ない。
では、Rollinsの血を騒がせるものは何か。彼には、クラシックのバイオリニストとして、今でも年に数回は公の場で演奏するという仕事以外の顔もある。また彼はモトクロスのレースに出場したり、スキーも楽しむ。さらに、歴史書の熱心なファンで、最近は合衆国建国の父に興味があり、危機の時代における政治的リーダーシップに関する本を愛読しているという。しかし、そこに描かれた世界はRollinsを取り巻く状況とはほど遠いものだろう。Dellの業績は常に他社を上回り、アナリストの予想を超え続けているのだから。
先ごろ、われわれはテキサス州オースチン郊外のラウンドロックにあるDellの広大な本社を訪れ、Rollinsと話をする機会を得た。快活で、若々しい風貌を持つこのCEOは、カジュアルな開襟シャツに、今風の黒縁の「ニューメディア風」眼鏡をかけ、木をぜいたくに使った豪華な重役用会議室で、われわれの質問によどみなく答えてくれた。話題は中国のIT市場からAppleとiPod、そして共和党まで多岐にわたった。
--現在のDellの目標は、年間売上を300億ドルから600億ドルに倍増させることですね。しかし、成長には限界があるのでは。どこまで数字を伸ばすつもりですか。1000億ドルも視野に入っているのでしょうか。
次の目標はまだ発表していませんが、1ついえるのは、私はまだ限界を感じていないということです。DellはPC市場の18%を占めているにすぎません。またPCの、当社の売上全体に占める割合は約60%です。PC事業だけをみれば、18%の市場シェアを2倍に引き上げることは可能です。36%という目標は決して無謀なものではありません。この目標が達成できれば、今年の売上は500億ドルから1000億ドルにはねあがるでしょう。もちろん、これに挑むかどうかは分かりません。大変な挑戦ですからね。しかし、無謀な挑戦ではありません。
--目標の達成を阻むものがあるとすれば、それは何でしょうか。Dellの弱点はどこにあるのですか。
組織としての弱点は執行能力です。われわれは数年前、経営を担う人材を十分に育てることができなければ、成長が頭打ちになる可能性があることに気づきました。次世代のDellを担う優秀な人材を教育し、その資質を磨いていかなければ、成長にブレーキがかかる可能性がある--この事態を避けるために、われわれは複数のプログラムを導入しました。しかしこの点は、今も弱点といえるかもしれません。
--IBMとLenovoに続いて、PC市場でさらなる統合が起こる可能性はありますか。
競合他社の経済状況--つまり、われわれのほかに利益をあげている企業がないという事実が、統合を促すことになると思います。IBMはPC事業の損失が過去3年間で合わせて11億ドルに上ったと発表しました。これが撤退の理由です。今後、どの企業がIBMに続くのかは分かりませんが、統合が進むことは間違いない。大手が軒並み赤字を垂れ流している状況で、ビジネスを維持することはできません。いつか誰かが白旗を揚げることになる--その最近の例がIBMだったのです。
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