全方位かピンポイントか:成功と失敗に学ぶベンチャー創業6つの教訓

文:Jawad Shuaib 翻訳校正:吉井美有2007年02月27日 08時00分

 今回は、ギーク向けソーシャルネットワークShuzak.comの創設者であるJawad Shuaib氏に寄稿いただいた。

 ここ3年で新興企業はねずみ算的に増えた。競争の激化とともに、多くの新興企業がより小さい対象に焦点を絞りつつある。2007年は、大きな市場を狙っている新興企業が、より小さな陣地を奪うことに焦点を絞ったスペシャリストへと変化する年になるだろう。これは、これまでとは違うゲームのルールが求められる新たな状況だ。起業家の仕事は、自分の企業の未来を、これらの変化に合わせるために先を見越すことだ。

 児童の親向けのソーシャルネットワークを例に取ってみよう。このカテゴリーだけを取っても、既存のサービスにはCafe Mom、Maya's Mom、MothersClick、MommyBuzz、MTV's ParentsConnect、Famster、Mintiがある。子どもの親を対象とした市場は埋まっているように見える。それでも、この市場は、例えば「祖父母向け」「専業主婦の母親向け」「シングルマザー向け」などにさらに細分化することができる。小さな特定の市場を支配することには、競争が少ない、ユーザーの忠誠心が高い、焦点が絞られているなど、多くの素晴らしい利点がある。全てのマーケティング専門家は、優れたものよりも先発したものの方が有利であるという基本原則を知っている。新興企業がソーシャルネットワークやブックマーキング、ビデオ共有などの分野で一番手になるのは無理だ。その結果、Web 2.0時代は新興企業に、対象人口が少なくなるという不利にもかかわらず、特定の市場に焦点を絞ることを求める。

Web 2.0ロゴ 提供:web2logo.com

 インターネットの新興企業の短い歴史は、何もかもが最初は1つのカテゴリーから始まり、競合企業が多く現れるに従って、それが次第に自然に複数のカテゴリーに分割されていくということを示している。分割を止めることは不可能だ。生き残るためには、新興企業は自分自身をほかとは違う存在として位置づける必要がある。そして、今それを実行する唯一の方法は、なるべく狭い特定市場を切り開くことだ。この記事では、全ての新興企業が生き残りのために従わなくてはならない不変の法則を記述する。

1.分割して統治せよ、差別化か死か

 MySpaceのような巨大なサイトは、今後は決して現れない。したがって、新興企業の市場のパイはそこまで大きくならないかもしれないが、1つのカテゴリ全体を支配すれば、その市場は小さくはあっても利益の上がる事業を維持できる。市場の規模が小さくなるにつれて、その中での競争は激しくなり、その特定市場に新たに参入する企業が受けられる便益は減っていく。もしあなたのいる市場が十分小さければ、そこに入ってくる可能性のある潜在的な競合他社を抑制し、健全な財務状態を維持することができる(1)。

 「分割の法則」の下では、全てのカテゴリーはいずれ細分化する。これまでもそうだったし、これからもそうだ。新興企業にチャンスをもたらすのは、この細分化だ。企業を作る一番よい方法は、既存のカテゴリーを追いかけるのではなく、まだ誰もいない新しいカテゴリーを作ることだ。言い方を変えれば、新興企業の生き残りには、細分化と、その後の専門化が必要だ。市場は明確な特徴を持った極端なものを好む。

2.一般的には、市場が小さいほど、ユーザーの忠誠度は高い

 「見る人すべてから好まれる製品は成功しない。すべての人が好む製品が失敗するのは、その製品を愛するユーザーがひとりもいないからだ。成功を導く唯一のものは情熱だ。それが消費者の10%の層でしかなくても」- Scott Adams、Dilbert Blog

 特定のカテゴリーに焦点を絞った特定の新興企業が、より結びつきの強いコミュニティーを作る傾向があるのは、驚くべきことではない。Diggはギーク向けの優れたソーシャルブックマーキングとしてスタートしたが、成長するに従って、より大きな市場シェアを狙うようになった。その結果、Diggは今では多くの新しいユーザーを獲得したが、筋金入りのファンは少なくなった。多くの新興企業にとって、拡大路線は簡単な選択のひとつだ。それは安くて論理的な成長方法だと考えられている。しかし、企業が後ろを振り返って、大きくなった代償としてユーザーの忠誠を失ってしまったことに気づいたときには手遅れなのが常だ。焦点を絞ることが、現在の苛烈な競争の中で首尾よくコミュニティーを形成する鍵だ。

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