Microsoftの会長であるBill Gates氏が、世界の企業リーダーに「創造的資本主義」に沿った活動を求めている。しかし、それは本当に賢明なことなのだろうか?
スイスのダボスで開催された世界経済フォーラムで、Gates氏は現地時間1月24日にスピーチを行った。その時に同氏が言ったことを考察してみよう。全体として何を言おうとしたのかやや不明瞭だが、創造的資本主義というのは、企業がお金を出して(あるいは採算のとれないプロジェクトを実施して)社会的に望ましいとされる行動をすることが軸になっているように思われる。Gates氏にとって創造的資本主義とは、「世界の不平等の緩和」につながる「市場ベースの社会変革」なのだ。
どこかで聞いた話だと思ったら、それもそのはず、これは「企業の社会的責任」や「ケアする資本主義」として40年以上も議論されている考え方を、人目を引く形にして言い換えたものだ。善意から出たGates氏の呼びかけは、そうした取り組みを米国国内の慈善活動から貧しい国に向けた国際的な慈善活動へとシフトさせようとしている。
ただ、Gates氏がダボスで行ったスピーチで触れられていないことがある。企業はすでにコミュニティーや慈善活動に資金を提供している。企業は従業員や幹部に賃金を払っており、彼らは各自適当だと思う慈善活動に寄付ができる。企業は納入業者に代金を払っており、そこでもまた同じことが言える。そして、ひょっとするとこれがいちばん重要なのかもしれないが、企業は株主に利益を還元しており、株主はどの慈善活動を支援するか選ぶことができる。
そして米国人というのは、政府によって税金を通じて寄付を強制されながらも、信じられない気前のよさをみせる。アジアで大津波が発生した際、米国政府は支援のために、国民が納めた税金から9億ドルを差し出したが、さらに個人から総額約20億ドルが寄付された。こうしたすべてをあわせると、米国人は140万件の慈善事業に、年間2600億ドルもの金額を寄付している(参考に挙げておくと、米航空宇宙局の2007年度の予算は、全部で約160億ドルだ)。
こうしたエコシステムが、気に入った慈善事業に寄付する企業幹部の気まぐれに左右されることになるとしたら、それは世界にとってプラスなのだろうか?企業の最高経営責任者(CEO)に慈善事業をどのようなかたちで行うかを判断する特別な能力があると考えるべき理由はまったくない。むしろ、非営利団体や教会に参加して情報を収集している個人株主のほうが(どこが寄付を受ける資格のあるところか、じかに知っていて)、どちらかというとふさわしい立場にある。判断を下すのに、一極集中が必ずプラスに働くというわけではない。分散型の意思決定のほうが賢明な場合もあるということだ。
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