今、12月7日から開催される「ニューヨークアニメフェスティバル」(NYAF2007)とそれに先駆けて併催されるICv2 Conference on Manga & Anime(米国でのマンガ/アニメビジネスに関するカンファレンス)に参加するために、半年振りにニューヨークに来ている。
NYAFとしての開催は今回が初回。昨年まではファンイベントして開催されていたが、イベント主催会社のReed Exhibitionsが乗り込んで、ビジネスも範ちゅうに入れた大規模なイベント化を狙っている。とはいえ、会場の様子といえば、会場の外は摂氏1℃という状態にもかかわらず大きく肌を露出したコスプレーヤーさんたちがブースの合間を闊歩(かっぽ)し、ブースではお互い顔見知りのビジネスパーソンたちがあちこちで立ち話の商談をするといったカジュアルなもの。ちょうど、コミケ(CtoC)と東京国際アニメフェスティバル(TAF:BtoC)、そしてLicensing International Expoか国際テレビ番組見本市(MIPCOM)(共に映像などのライセンスを取り扱うBtoBイベント)とを足して3で割ったような、どちらかといえば気楽な雰囲気だ。
しかし、NYAFの一般公開に先駆けて6日に開催されたビジネスカンファレンスの雰囲気は硬く、かなり深刻な発言が飛び交った。後述するようにmanga(マンガ)が急速に若年層を中心に普及し、一般社会でも認知が高まる中、先行して市場を築いたanime(アニメ)が失速したままだからだ。この状況を指してある大手エンターテインメント流通事業会社の代表から「日本は終わった」「(発祥の地、日本では)mangaも死につつある(ゆえに、米国市場もすぐに落ち込むのではないか)」といった過激な言葉も飛び出し、今後の米国市場の将来を危惧する気持ちがうかがえた。
もちろん、それに対する反論もあった。ただ、2002年から2005年にかけて好況を作り出したようなスーパーヒット作が昨今の米国anime市場では見当たらないことが指摘されると、順調な成長を遂げているといわれるmangaですら霞む気がするほど、会場は暗いムードになった。
ただし、「Yu-Gi-Oh!(遊☆戯☆王)」、「Naruto(NARUTO―ナルト―)」や「Fullmetal Alchmist(鋼の錬金術師)」などヒット作品の社会的認知の高まりはmanga以上にあるのも現実だ。例えば2002年当時、Animeの専門チャンネルや放映枠は2つしかなかったが、現在は11になり、レギュラーに放映されているシリーズ数も18から38にまで増加している。そして、そもそも大手のイベント会社のReedが大都市ニューヨークでAnime Festivalの開催を決定し、ケーブルテレビなどのメディアで着実に勢力を増しているように見える。
では、なぜanime市場の関係者から深刻な発言がなされたのか。
そのanimeの話をする前に、mangaについて見てみよう。
一般にはあまり知られていないかもしれないが、現在、北米ではmanga旋風が吹き荒れている。comicでも、graphic novelでもなく、manga(いわゆるアメコミとは区分して、日本発の右開きのgraphic novelを特にmangaと呼んでいる)なのだ。
その勢いを示すとして、全米の大手書店や公立図書館では積極的にmangaを取り揃えつつあり、確実に専門コーナーができている、といえばどうだろうか。また、ある米国人いわく、いまやすべての北米の高校にはmanga研究会が存在し、anime(実はJapanimationという表現は一般にはされない。manga同様、「anime」はそのまま日本製のアニメーション作品のことを示す)がhipなカルチャー系のケーブルチャンネルで放映されている。
1980年代に「Voltron(百獣王ゴライオン)」や「Robotech(超時空要塞マクロス、超時空騎団サザンクロス、機甲創世記モスピーダの3作を合成した作品)」や「Akira(AKIRA)」、1990年代に入って「Dragon Ball Z(ドラゴンボールZ)」や「Sailer Moon(美少女戦士セーラームーン)」を見て育った世代が、大人になった今もanimeを見続け、そして今後はmangaを読み続ける(日本で定着しているような)習慣を身につけ始めている。これは欧州でも、同様の状況にあるといってよい。
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