「アニメ、マンガ、ケータイ」のデジタル化支えた創業技術者の信念

西田隆一(編集部) 島田昇(編集部)2007年02月08日 10時45分

 2006年12月。日本特有の事業を展開するベンチャー企業が、名証セントレックスへ上場した。

 「アニメ」「マンガ」「ケータイ」――。日本独自の文化をキーワードとしたビジネスを成功させたのが、ソフト開発を行うセルシスの会長、川上陽介氏だ。

 成長を支えたのは、技術者出身の川上氏が疑問に感じ実現を確信した「アナログだったアニメ業界がデジタル化できる」という直感を、7年間信じ続けてきたねばり強さだった。

 アニメ業界のデジタル化を実現した今、次は何の実現を目指し、自身の直感を信じ続けているのか。川上氏に聞いた。

--アニメ制作ソフトの開発に着目したきっかけとこれまでの経緯は。

 まず、人のやっていないことをやりたいというのがあったんです。そうじゃないと面白くないですからね。

 創業以前の1980年代は、コンピュータグラフィックス(CG)を使った映像制作ソフトの開発をしていたのですが、コンピュータの低価格化に伴い、それが一般化し始めてしまった。つまり、面白くなくなってきたのです(笑)。

 その後、アニメ業界が全くデジタル化されていないことを知り、これまでの技術を生かしてセルアニメのデジタル化を実現するソフトを開発したいと考え、1991年にセルシスを設立しました。

 マルチメディアコンテンツの制作で収益をまかないながら、1993年にアニメ制作ソフト「RETAS!PRO」が完成したのですが、発売当初は全く売れなかった。当時はアニメ業界全体がアナログだったことに加え、ソフト自体の使い勝手も悪く、そして何よりあの頃のパソコンの処理速度は遅かったのです。要は、時代を先取りしすぎていたということでしょう(笑)。

 それでもコツコツと3日に1回はマイナーバージョンアップをするような頻度でソフトの改善を重ね続け、1997年にようやく転機がやってきました。業界大手の東映アニメーションが大々的にデジタル化するということになり、業界全体がデジタル化に向けて一気に動き出しました。

 地道に7年間やり続けてきたということもあって、現在、弊社の独自調査で約9割のアニメ作品にRETAS!PROが利用されているという状況になっています。

--RETAS!PROはほぼ市場に行き渡っているわけですね。

 RETAS!PROはパッケージ販売のモデルなので、2年に1回くらいの頻度で行うバージョンアップのタイミングくらいしか、追加収益を確保する機会がないんです。そのため、最近では学校や新興プロダクションに向けて積極的に販売しており、利益率もいいため、安定した収益源にはなっています。

 また、最近ではソフトの利用料に応じた従量課金のモデルへの移行を少しずつ進めていっています。

 さらに、RETAS!PROをベースにワンソースマルチユースを実現するアニメ制作用撮影ツール「Core RETAS HD」を開発したので、これを前面に出して違うマーケットを開拓していきたいと思っています。というのは、通常、アニメプロダクションはアニメ作品を作るだけですが、ワンソースマルチユースにより自社作品関連の壁紙を売るなど、版権を自分たちで管理してさまざまなビジネスを展開できるベースが提供できるようになったのです。

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