最終更新時刻:2008年10月6日(月) 19時43分

iPhoneの日本展開が難しい本当の理由

森祐治

2007/07/03 11:00  

まずはモバイルから始まる

 そして、以前から業界内外で話題となっていた「モバイルビジネス研究会」でも、前述の「通信・放送の総合的な法体系に関する研究会」で提示されたレイヤーモデルに則った形で、現行の携帯電話通信事業者などのあるべき姿が6月26日に示された。

 先に導入された携帯電話番号ポータビリティ(MNP)制度が、携帯電話の垂直統合性を崩し、携帯電話の電話番号をそのままに他事業者に移行することを可能にしたが、メールアドレスなどの移行は依然としてできていない。また、移行先の事業者ではこれまで使ってきた端末を利用できないなどの問題もある。

 プラットフォームに帰属するさまざまな機能はインフラなどに密接に結びついている。その組み合わせこそが日本の携帯電話産業の強みであり、そして特徴であった。

 それらのおかげで、極めて短期間でのイノベーションの普及が実現されるなどの利点もあるという指摘がなされてきた。一方、レイヤーごとにくくられたオープンな仕組みが特徴であった欧州標準のGSMが実質的に世界標準になり、日本(と韓国)が実質的には携帯電話の孤島状態に、そしてそこで製品を開発販売してきたメーカーがその孤島にのみ生きる「ガラパゴス症候群」状態になり国際競争力を失ってしまうなど、長期的な欠点が目立つようになっていた。

 そこで、モバイルビジネス研究会の報告書では、これらの問題意識、特に利用者利便性のさらなる追求を目指した内容が広くカバーされている。例えば、携帯電話の販売における奨励金の在り方(端末価格とサービス契約の割引の未区分)やそれに関連したSIMロック(通話者IDモジュール(SIM)を他社携帯電話では利用できないようにしたり、最初に挿入されたSIMでしか利用できないようにしたりする措置)の是非、複雑な料金体系への問題意識、WiMAXなどの新たな高速移動体通信サービスとの連携、MVNOなどへの対応の在り方など、既存の携帯電話事業者にとっては大きな変化を求める話題が数多く記されている。

短期間での改革は困難だが

 客観的に考えてみると、通話料金が単純に比較できないプランを並べて、割引をいくら組み合わせれば、どの携帯電話会社が自分にとって得なのかわからない状況がとても望ましいとはいえないだろう。しかし、現在の携帯電話は通話だけで議論しきれるものでもないことも明らかであり、むしろパケットデータ通信によってもたらされるサービスの比重の方が多くなってきている印象が強い。

 最初に話題として掲げたiPhoneは、スマート「フォン」といえども実質的にはハンディでPC的な機能を備えたデバイスとして位置づけられ、それに適した(比較的単純明快な)データ通信料金体系を備えている。現在、米国ではAT&Tでのみ利用できる状態であるが、今後欧州では複数の携帯電話通信会社でも利用可能な状態で販売されるのではないか。

 もちろん、iPhoneを日本で展開するために、レイヤーモデルやモバイルビジネス研究会の報告書が描かれたわけではない。ただ、例えばiPhoneを導入できる状況にあることが現在の世界の大勢であれば、少なくともそれに適した選択肢がここ日本にもあることが望ましい。そんな選択肢を提供可能とすることに、今回提案されている変革が確実に貢献するに違いない。

 とはいえ、2011年の完全デジタル化という状況に、モバイルだけではなく、放送も、ブロードバンドも、そして今後提供されるであろうFMCやWiMAXなどの無線広帯域サービスも一足飛びに最適化できるわけではない。実際にモバイルビジネス研究会の報告書でも、今すぐアクションを取るべきものと2011年以降をにらんだアクションと2つのフェーズを設定している。

 まだ具体的アクションまでは見えてはおらず、そしてあるべき姿への移行にどの程度の痛みと時間がかかるかもわからない。しかし、その大きな波は、放送通信全体のなかでも最も早くモバイルの領域に到達することは確実なようだ。そして、その波はこれまでの常識をことごとく覆す可能性が大きい。しかし、そのことに抗うよりも、むしろその波をうまく生かして、再びこれまでにはないサービスや製品を創り出すことに向かった方が、もしかしたらリスクが少ないのではないかと考えてはどうか。そう、iPhone以上のイノベーションを、iPhoneすら共有可能な状況で創りだすことに賭けてみることは、かなり面白そうな挑戦ではないだろうか。

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