今年は、制度面での大きな進展はあったものの、少なくとも2011年の「デジタル元年」という区切りまでは依然として放送と通信の融合の行き着くところは見えないままだ。だが、例えば、携帯電話が過剰な機能やデザインを主張するよりも本来あるべき携帯性を取り戻しつつあることや、任天堂の新型ゲームコンソール「Wii」のように「身体」との協働性に訴求する商品に注目が集まるように、「あちら側」ではなく、究めて身近な「世界」への揺り戻しがあるのではないか。
身体性の延長では、まずは携帯電話が「公式サイト」との関係性という呪縛から抜け出すことで、あちら側(ネット)とこちら側(リアル)の架け橋としての存在感が加速度をつけて増してくるだろう。これまでネットはPCをインターフェースとしてきたが、携帯電話が物理的な自由度を伴ったインターフェースとして機能しはじめることは、すでに予定調和的な現実だ。一方、PCを介してネットはリビングなどの家庭内ネットワーク環境(と、その周辺端末)に浸透していくはずだ。そして、それほど遠くない未来で、街中などに設置された公的なセンサ網との連動すら起こってくるだろう。また、単にリアルタイムでのリンクだけではなく、蓄積された膨大なデータを処理することで得られたメタデータによって、これまでにはない価値の創出がなされるに違いない。
僕が以前属していたソフトウェア会社では「3.0にならなければ、まともな製品とは言えない」という冗談がよく交わされていたことがあった。この冗談とも、真摯な経験則とも受け取れる言葉を仮に受け入れれば、Web 2.0の次こそがインターネットがもたらす変化の本命となるのかもしれない。それは、きっとウェブに限定されない、ネットとリアルのインターフェースに依るものではないだろうか。
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