8月3日に大証ヘラクレス市場に新規上場(IPO)した各種コンテンツの企画や配信業務を展開しているブロードバンドタワー(BBTower)の株価が、連日のストップ高となるなど高い買い人気を継続し、上場後わずか半月で公開価格のなんと9倍に達した。新興市場全体の人気が離散し、指標株価(ジャスダック指数)が低迷するなかでの快進撃といえる。その人気の背景を探った。
BBTowerは東証マザーズに上場しているインターネット総合研究所の子会社で、「スペースサービス」、「インターネット接続サービス」、「監視、運用サービス」を中心としたデータセンター(IDC)事業を主力としている。第2の柱としては、ネットシネマなどのブロードバンド配信事業を育成している。
ウェブサーバなどのシステムを専用設備で運用するデータセンター事業は、12月中間期時点で連結売上高の91%を占める。東京の大手町、天王洲に拠点を持ち、インターネット接続サービスでの回線総数は国内4位。天王洲の拠点は2004年11月に新設したばかりだが、需要拡大により2005年4月には早くも増床に踏み切っている。事業収益は、主要顧客であるヤフー向けの増加に伴って拡大している。ヤフー向けの売上高に占める割合は、前6月期末時点で6割を占めている。
一方のブロードバンド配信事業は、2004年6月にライブドアと共同でブロードバンドピクチャーズを設立して参入した。IDCを手掛けるインフラ力を最大限に活用し、プラットフォーム提供のほか、インターネットシネマやドキュメントなどの企画、制作、配信を行う。実績としては、ヤフーと共同制作した「ニッポンの挑戦 インターネットの夜明け」などがある。動画コンテンツへの需要は高く、製作本数は拡大中。今後は、IDC事業とのシナジー(相乗)効果を高めるほか、ニッチ分野を狙った専門ポータルサイト事業などへの進出も計画している。
同社の2005年6月期の単独業績は、売上高48億5300万円(前期比61%増)、経常利益5億9300万円(同2.3倍)、当期利益6億900万円(同2倍)程度と推定されている。これは、ヤフーなどの大口顧客のシステム拡張に伴うスペースサービスの提供拡大などが寄与しているため。また、ブロードバンド配信事業では、映像コンテンツ制作受託の本数の増加、携帯ゲームダウンロード向けのサービスを含む配信サービスが好調に推移している。
8月3日にヘラクレス市場に新規上場したBBTowerの公開価格は105万円。上場当日は強烈な人気を集めて買い気配のまま値つかずで終了。上場2日目も買い気配で推移していたが、ようやく公開価格の2.88倍にあたる303万円で初値を付けた。初値ベースの1株あたり収益率(PER)は82.8倍。その後も連日のストップ高で買われるなどハイピッチでの上昇が続き、8月18日には949万円の高値をつけ、公開価格に対する上昇率は9倍に達した。
外国証券のアナリストは「BBTowerの株価急上昇の背景には、ブロードバンド配信事業の将来への期待がある。しかし、上場後の株価急伸は買いが買いを呼ぶ思惑先行のバブル的な状態。それに2005年3月9日に、やはりヘラクレス市場に公開価格120万円で新規上場したガンホー・オンライン・エンターテイメントの株価が、品薄の超値がさ株の特徴を存分に発揮して、約1カ月後の4月12日には公開価格の19倍に相当する2310万円にまでハネ上がるという事態が発生したという経緯があった。この経緯を踏まえて“2匹目のドジョウを狙った”買いが殺到したのが実情ではないのか」と指摘している。
現在、高株価ランキングでは2位(1位はガンホー・オンライン・エンターテイメントの1440万円=8月19日終値)だが、トップのガンホー・オンライン・エンターテイメントは8月末に1対5の株式分割を控えており、まもなくトップとなる可能性が高い。BBTowerの株価上昇の背景にも、もちろん早い時期での大幅株式分割実施への期待が膨らんでいることは確かだ。
一方、親会社であるIRIは8月4日、BBTowerの初値(303万円)で保有株のうち300株を売却、約8億3700万円の売却益を得たと発表している。子会社の相次ぐ株式上場を記念して上場来初となる配当(年500円)を実施することも発表しており、好感買いを集め株価が上昇した。今回の売却で議決権ベースの保有比率は50.14%に低下したが、これは「証券会社からの要望による、いわゆる“冷やし”の売却であり、追加売却は予定していない」(広報担当者)としている。IRIは主力子会社残り4社の株式上場準備も進めている。
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