郵政民営化法案の成否問題の影響で揺れる株式市場にあって、NTTの株価が8月3日に一時、50万5000円まで買い進まれ、2004年8月26日以来ほぼ1年ぶりに50万円の大台を回復した。NTTの株価は、2005年4月21日の安値42万2000円からほぼ一貫して上昇軌道をたどり50万円に乗せてきたわけだ。
株価が上昇軌道をたどってきた背景にはいくつかの要素があるが、証券会社系調査機関のNTT担当アナリストの間でささやかれているのは、「想定されていたよりもやや業績が好調に推移している」という控えめなサプライズだ。8月3日に発表されたNTTの2005年3月期第1四半期(4〜6月)の連結決算(米国会計基準)は、先行して発表されていたNTTドコモの業績好調に加えて、東西地域会社、加入者(光ファイバサービスを除く)、ARPU(月間電気通信事業収入)の両面で期初計画を上回っており、業績の底堅さが確認されたかたちとなった。
NTTが3日に発表した第1四半期の連結決算は、固定通信と携帯電話両方での料金引き下げの影響が営業費用の削減努力をカバーし切れずに、売上高は前年同期比2%減の2兆5996億円、本業の儲けを示す営業利益が同5%減の3996億円、純利益は同4%減の1775億円となった。
しかし、市場では「前年同期比5%の営業減益は、事前に市場関係者のあいだで予想されていた数値に比べてかなり小幅な減少にとどまったとの印象を受けた」(外国証券のアナリスト)との見方が出ている。第1四半期の業績が事前想定に比べて好調な推移となったのは、光ファイバサービス「Bフレッツ」の契約増加などのIP(インターネットプロトコル)系サービス部門の収入が前年同期比6%増となったことや、NTTドコモが7月29日発表した2006年3月期の連結決算(米国会計基準)が、売上高で前年同期比2.8%減の1兆1870億円となったものの、営業利益が同4.0%増の2876億1400万円となったことも寄与している。昨年導入した携帯電話の通信料金値下げの影響で減収となったが、営業費用の削減で補い、増益を達成した。
もうひとつ、NTTの買い材料となったのが、需給面の改善だった。特に、7月15日からNTTの政府保有株(財務大臣名義)のうち、約92万株がTOPIX(東証株価指数)の上場株扱いとなったため、TOPIXに連動した運用を目指す機関投資家が買い増すとの思惑から先回りの買いが先行したためだ。
今回の措置は、「仮に政府保有株が今期、売り出された場合、NTTが自社株買い(NTTは今年6月の株主総会で125万株を上限とする自社株買い枠を設定している)で対応できるようにするための準備」で、政府保有のNTT株は東証基準では、上場株式ではなく、事前に上場株式扱いにしておかないと自社株買いできない仕組みになっていたためだ。さらに、10月末にも予想されるTOPIXの浮動株化(当コラム2005年7月19日付参照)によるNTT株への買い需要が前倒しで、今後継続することも予想される。
さらに、信用取引の残高面からも、7月29日申し込み現在で売り残高8174株、買い残高5567株で、信用倍率が0.68倍と売り残高が買い残高を大きく上回っており、今後の買い需要を内包していることも株価堅調のひとつの要因となっているようだ。
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