主力ハイテク銘柄の株価が持ち直す傾向を見せる中で、三洋電機の株価が先週末にかけて急落。6月3日には大量の売り物を集め、東証1部トップの出来高で一時、269円まで売り込まれ、2002年11月19日につけたバブル崩壊後の最安値である264円が目前に迫ってきた。三洋電機にいったい何が起こっているのか。
三洋電機の株価が一段安するきっかけとなったのは、すでに4月下旬に発表済みの前3月期連結決算(米国会計基準)を修正し、連結最終損益の赤字額が従来公表していた1371億4200万円から1715億4400万円に膨らんだとの発表だった。中央青山監査法人の指摘により、繰り延べ税金資産(※)の評価を修正したためだ。大手企業がすでに発表済みの決算を修正するだけでもかなり異例だが、同社は前期に続いてなんと2度目。2期連続の決算発表後の修正に対する市場の不信感は強く、UBS証券は5月25日、三洋電機の目標株価を従来の260円から225円に引き下げた。投資判断も「Reduce2」(弱気)を継続している。
アナリストの間では、携帯電話やデジタルカメラのノンブランド・OEM(相手先ブランド生産)戦略、中国大手家電のハイアール社と提携した海外展開の失敗を指摘する声が多い。出来高を伴って株価が下落していることについて、市場からは「株価がバブル後最安値に接近してきたことで、大量に保有している機関投資家さえも堪えきれなくなって、見切り売りに踏み切ったのではないか」との声も聞こえてくる。
確かに三洋電機は不運が続いている。2004年10月の新潟県中越地震により半導体子会社の新潟三洋電子(小千谷市)の製造設備に重大な被害が発生。これに伴い、想定外の大きな損失が生じたのは事実だ。しかし、デジタルカメラや携帯電話など、デジタル家電関連の予想以上の不振も業績下方修正の大きな要因となっている。2005年4月27日には2006年3月期の配当について、前期の3円から無配(前期は3円)にすると発表した。1954年の上場以来、初の無配転落となった。また、今期に900億円の構造改革費用を計上し、連結最終損益が大幅な赤字となるため、2005年7月に新しい経営陣によって打ち出される新経営計画では、思いきった人員削減や関係会社の整理統合、不採算事業からの撤退などの構造改革が示されることになりそうだ。
市場関係者からは「ジャーナリストの野中ともよ氏を会長兼CEO(最高経営責任者)に就任させるという奇をてらった人事の評判もあまり芳しくない。井植敏現会長は、会長職は退くものの、代表取締役兼取締役議長の役目は継続する意向で、経営不振の責任をとったとは言い難い。さらに、長男の敏雅副社長を社長兼COO(最高執行責任者)に昇格させ、13年ぶりに創業家の井植一族からの社長就任を実現させている。“井植商店”の色彩が強まる中での厳しいリストラの断行を社員はどう受け止めるのか」という見方が出ている。
さらに、「子会社でクレジットとリース事業を展開している三洋電機クレジットについても、2004年に相次いで取引先が経営破たんして特別損失の計上を強いられるなど厳しい経営環境が続いている」と悲観論が台頭している。
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