ADSL(非対称デジタル加入者線)接続サービス大手で東証マザーズ上場のイー・アクセスの株価が、11月8日の安値8万1500円から上昇に転じ、10万円台に乗せてきている。特に、11月17日に東証が同社の第一部市場への上場を承認したことが好感され、翌18日には前日比ストップ高となるなど先週末にかけて株価の上昇が加速した。
東証第一部への上場が決定したことで株価が急上昇したのは、機関投資家の組み入れ期待が高まっているためだ。市場変更日は24日で、TOPIX(東証株価指数)に即日採用となる。TOPIX採用銘柄となると、多くの機関投資家からインデックス運用に組み入れるためのシステマティックな買いが入るとの思惑が働いて、これを先取りする買いが集中しているためだ。
同社は、昨年10月に東証マザーズに上場したばかり。(1)時価総額1000億円以上(2)累積損失解消--などをクリアした場合に認められる特例によって、わずか設立5年で念願だった東証第一部への上場を果たすことになった。これまで、短期間での東証第一部への上場を果たしたドワンゴ(7年3カ月)、ヤフー(7年7カ月)よりも2年以上早く上場が実現することになり、企業分割、合併などの特殊要因で設立された企業を除けば過去最速の記録となった。マザーズから東証第一部への直接上場はこれで6社目に当たる。
同社は、10月26日に9月中間期の単独決算を発表し、売上高271億円(前年同期比55.6%増)、経常利益は40億円(同7.2倍)、純利益は同12億円増の36.7億円(同6.5倍)と大幅な増収増益となった。2004年3月期の通期業績については、9月中間期の加入者増に伴う下期売上への貢献を考慮し、売上高が従来予想比10億円増の580億円(前期比52.1%増)。また、エリア拡大、AOL事業のマーケティング強化などに伴うコストの増加が見込みを下回ったこともあり、経常利益も従来予想に比べて15億円増の70億円(同2.6倍)、純利益も同12億円増の67億円(同2.8倍)と、大幅な増収増益を見込んでいる。
9月中間決算では、ADSL契約数が前年同期比50.7%増の177.8万人に拡大したことで、ARPU(1加入者あたりの月間平均収入)が同5.2%減の2549円となったマイナス要因をカバーした。さらに、7月に営業譲受が完了したAOL事業が第2四半期から計上されており、これらが増収の要因となっている。
NTTが中期経営戦略で2010年までに3000万ユーザーにFTTH(光ファイバーによる家庭向けのデータ通信サービス)を提供すると発表するなど、にわかにFTTHが脚光を浴びている。中期的にはFTTHへの本格移行が進むことが予想されるが、数年間はADSLがブロードバンドの主役になり続けるものと予想されている。したがって、来期以降も当面は順調な業績推移が予想され、株価も中期的には7月末の株式分割後の高値13万8000円回復を目指す展開となることが期待されている。
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