暗雲漂う「IT839」戦略--鳴り物入りでスタートした計画に何が・・・(後編)

 日本に「e-Japan」計画があるように、韓国にも「u-Korea」という、ユビキタス社会を目指すスローガンのようなものがある。そしてそれを実現するための具体的な推進政策が「IT839」戦略だ。これは、世界最先端のIT技術開発により、国内の産業や市場を活性化させようという、まさに国全体の利益や発展をかけた重要な戦略だ。

 このIT839が近頃、現実には期待ほどの成果をあげらず、誤算もあったのではないかと指摘されている。前編のレポートに続き、本稿ではDMB(モバイル用デジタル放送)サービスとテレマティクスサービスの不振についてレポートする。

収益モデルが描けず--DMBサービス

 DMB(モバイル用デジタル放送)は、韓国では結構人気のあるサービスだ。街のいたるところで、携帯電話やマルチメディアプレーヤーでDMB放送に見入っている人の姿を日常的に見かける。確かに人気はあるのだが、以前当コラム内でも触れたように、ビジネスは順調でない。

 衛星DMB(日本で言うモバイル放送)が背水の陣の戦いを続けていることは、以前触れたとおりだ。

 順調に見える地上波DMBも、収益を出すのに苦労している。地上波DMBに関する研究費だけでも740万ウォンが投入されたが、2006年における地上波DMB事業者の広告売り上げは17億ウォン程度。同年の事業者による設備投資費は1172億ウォンと推測されている。

 地上波DMBは今、走る地下鉄内でも難なく見られ、全国放送も開始された。ユーザーにとっては便利な反面、それに伴う投資は莫大だ。

 こうした投資は収入でカバーするしかないのだが、収益モデルが確立されていない。現時点で主だった収益モデルといえば広告になるのだが、それだけでは不足だ。たとえ700万人以上のユーザーを抱えているとはいえ、通常のテレビで見る地上波テレビと比べれば、インパクトに欠け視聴時間も短いなどの理由で、宣伝に及び腰の企業が多いようだ。

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