パンデミックが発生する前、Tori Allen氏はクライアントとの会議に電話で対応していた。しかし、聴覚障害者である同氏にとって、相手の言っていることを理解することは難しかった。パンデミックの発生後、そうしたやりとりは「Zoom」でのビデオ通話になり、Allen氏は何が起きているのかを把握しやすくなった。
統合マーケティング担当ディレクターであるAllen氏は、「誰かが話している内容を完全に理解するために、私は読唇術を使ったり、顔の表情を頼りにしたりしている」と述べた。
新型コロナウイルス(COVID-19)のパンデミック下で、バーチャルワークやリモートワークへの移行が急激に進んだことは、あらゆる人に重大な影響を及ぼした。なかでも、障害者への影響は特に大きかったはずだ。障害者コミュニティーの多くの人々は何年も前から、在宅勤務やデジタルアクセシビリティーの強化といった対応を求めていた。ウェブアクセシビリティーソリューションを提供するAccessiBeのレポートによると、そのような声があるにもかかわらず、米国のウェブサイトのなんと98%は十分なアクセシビリティーを備えていないそうだ。
これらの要求が実現したのは、多くのオフィスや学校が閉鎖され、バーチャルに移行してからのことだった。ビデオ会議の利用者の増加を受けて、テクノロジー企業は字幕や自動文字起こしなどの機能の無料提供を開始した。
アクセシビリティーの支持者であるMeenakshi Das氏は、「ビデオ通話のキャプションは、聴覚障害者だけでなく、自宅の騒がしい環境で仕事をしなければならない人にも恩恵をもたらした」と語った。「柔軟な勤務スケジュールは、障害者だけでなく、家にいる子供たちの世話をしなければならない保護者の助けにもなった」
しかし、世界が徐々に「通常」に戻ろうとする中で支持者達は、この数年間の進歩を後退させないことが重要だ、と述べている。リモートワークからオフィス勤務に移行している企業もあるが、一部の障害者にとっては、在宅勤務が依然として理想的だと記憶しておくことが重要だ。結局のところ、肝心なのは、従業員の希望に最も効果的に対応できる方法について、従業員とコミュニケーションを取ることだ。
在宅勤務などの対応策は、障害者に必要だから認められたわけではないが、結果として、一部の障害者に恩恵をもたらすこととなった。弁護士のKelley Simoneaux氏などはその一例だ。Simoneaux氏は、16歳のときに自動車事故で脊髄損傷を負ってから、車椅子を使用している。それ以来、通勤通学時も含め、ほぼどこに行っても、車椅子に対応していない場所への対処を余儀なくされてきた。しかし、在宅勤務を始めたことで、その問題は取り除かれた。
「地下鉄のエレベーターが正常に動作しているか心配しなくてもよくなった。通勤する必要がなくなったからだ」とSimoneaux氏。「別の場所に移動しようとした際に起きるかもしれないそうした問題は、排除することが可能だ」
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス