ロシアが現地時間2月24日にウクライナへの侵攻を開始する前から、Cogent Communicationsの最高経営責任者(CEO)Dave Schaeffer氏は大きな問題に直面していた。
インターネットの大規模なバックボーンを運営し、接続サービスを提供するCogentは、ロシア軍参謀本部情報総局(GRU)がインターネットを使ってオンライン攻撃を仕掛けていることを確認していた。攻撃の一部は、Cogentのシステムを経由していたことを突き止めた。
Schaeffer氏は、ウクライナ、米国、そしてインターネット全体が標的となる恐れのある、より深刻な攻撃について懸念し始めた。そのような攻撃の経路にCogentのネットワークが使われる可能性を憂慮した。数日間の議論を経て、Cogentは現地時間3月4日より、ロシアの顧客に対し、国外インターネットへの接続を停止することを決定した。
「私の最大の懸念は、当社のネットワークが攻撃を目的として悪用されることだった」とSchaeffer氏はインタービューで述べている。
Cogentの決定は、サービスの提供範囲、速度、信頼性を誇るネットワーキング業界で注目に値するものだ。Cogentは米国の通信大手企業であり、特に大きな意味を持つ。同社の光ファイバーケーブルネットワークは10万マイル(約16万km)に達し、北米、南米、欧州、アジア、オーストラリア、アフリカに及んでいる。ロシア国内だけでも、同社のサービスは、インターネットサービスプロバイダー、大学、政府、企業などが運営する多数のネットワークを同国の通信事業者と結んでいる。
ロシアがアクセスを切断されることは、インターネットの歴史上重大な出来事といえる。今やインターネットはわれわれの生活に深く浸透している。バンコクの天気を確認したり、コルシカ島でレンタカーを予約したりすることもできる。他国からの圧力と、国内の措置によってロシアの孤立が進めば、グローバルなインターネットが地域間で分断される「スプリンターネット」(split+internet=splinternet)のリスクが高まる。これまでのところ、大国が通常のグローバルなインターネットから距離を置く最も大規模な対応は、中国の「グレートファイアウォール」によるコンテンツの遮断だった。
ロシアのオンラインにおけるプレゼンスを縮小させる要素はCogentの対応のみではない。西側に本拠を置く企業の多くは、ロシアがサービスを利用することが難しくなるよう対応している。YouTubeは、ロシア国営メディアのRTをはじめとするロシア系のチャンネルが広告収入を得られないようにしている。AppleやMicrosoftは製品の販売を停止した。Adobeはさらに、政府系メディアなどへのクラウドベースのサービス提供を停止している。もう1つの世界的ネットワークプロバイダーLumen Technologiesも、Cogentの決定から数日後にロシアでの事業を停止した。
ロシアも、市民のインターネット利用を制限しようとしている。ロシア政府は、Facebookへのアクセスを遮断した。ロシア市民が、国営メディアの報道から独立した視点でウクライナ侵攻について把握する上で有用となるためだ。また、14日にInstagramも遮断すると表明していた。
こういった動きと比較しても、Cogentによるロシアでのサービス停止は特に注目に値する。Schaeffer氏によると、今回の決断によって、ロシアの一般市民が、例えば国外から動画をストリーミングできなくなることを認識した上で、同社はグローバル規模でネットセキュリティを強化することを優先させたという。
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