米通信大手Cogent Communicationsはロシアの顧客に対して現地時間3月4日、インターネットサービスを切断すると通知した。ロシアによるウクライナ侵攻と、それに伴って始まった世界各国による経済制裁を理由として挙げている。
ネットワークの監視と解析を手掛けるKentikによると、Cogentは顧客宛ての電子メールでこう説明したという。「ウクライナに対する不当でいわれのない侵攻を考慮して、Cogentはグリニッジ標準時2022年3月4日午後5時にあなたへのすべてのサービスを停止する。侵攻の結果として経済制裁が発動され、セキュリティ状況がますます不透明になる中で、Cogentはあなたにサービスの提供を継続できなくなった」
これによって、ロシア国民がインターネットにアクセスできなくなるわけではないが、主要なトラフィック経路が失われることになる。Cogentは、北米、南米、欧州、アジア、オーストラリア、アフリカの都市間および都市内を結ぶ、10万マイル(約16万km)以上に相当する光ファイバーリンクを運用している。
Cogentによるロシアでのサービス停止は、「splinternet」に向けた新たな一歩だ。splinternetとは、インターネットインフラの分断化のことで、世界にまたがる通信技術の有用性を弱めるとして一部のオンライン関連組織が懸念を示している。中国の「Great Firewall」(グレートファイアーウォール)は長年にわたり、多くのサービスを検閲および遮断している。ロシア当局は4日、「Facebook」へのアクセスを遮断すると発表した。
インターネット推進派は、ネットワークがロシアで稼働し続けることを望んでいる。その理由の1つは、これを失うとロシアの一般市民は、厳しく統制された国営メディアとは独立した情報源から、ウクライナ情勢に関する情報を得ることが難しくなる可能性があるためだ。
ドメイン名の管理などを担う非営利団体ICANNは先週、「.ru」などロシアのトップレベルドメイン(TLD)と同国に関連するSSL証明書の取り消しを求めた、ウクライナの要請を拒否した。ICANNの最高経営責任者(CEO)であるGoran Marby氏は書簡で、インターネットは分散型システムであるため1組織が遮断できるものではなく、さらにICANNは世界的信用を確保するために中立を維持する必要があると説明した。
Cogentによるネットワーク切断に加えて、コンピューティングや電子サービスの利用が、ロシアでますます難しくなっている。PayPal、Mastercard、Visaは決済サービスを停止している。Apple、サムスン、Microsoft、Intel、Adobeは、ロシアにおける技術製品の販売を停止している。国際送金システムSWIFTからも遮断される中、ロシア国外の企業が同国で事業を運営することは、格段に難しい状態になっている。
この記事は海外Red Ventures発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス