私は数年前、地元のデイセンターでボランティアをした。このセンターは主に地域のホームレスの人々を支援している。私の仕事は、寄付された衣料品の山の中から生活に困窮している人々の役に立つ「お宝」、つまり鮮やかなブラウスやテーラードコートなどを見つけ出すことだった。
しかし、すべての服が再利用されるわけではない。例えば、シミのついたGAPのTシャツや何カ所も破れたズボンは、即ゴミ箱行きになった。
ゴミとして廃棄される古着が増えている。一方、流行の移り変わりが激しいファストファッションの人気はうなぎ登りだ。コロナ危機により、衣料品全体の売り上げは激減したが、Eコマース(EC)経由の売上は順調に伸びている。買ったものを置く場所を作るため、巣ごもり中の人々はクローゼットの整理に精を出し、大量の衣料品が慈善団体に寄付されることになった。
しかし、地域で再利用されると思って寄付した服は、工場の雑巾やカーペット、家の断熱材に姿を変えるかもしれない。さらに一部の古着は、ガーナやウガンダ、マレーシアといった国々にまとめて輸出され、掘り出し物を狙う現地の小売業者の手にわたる。非営利の報道機関Rest of Worldによると、ECサイトで販売され、返品された商品の一部は海外に出荷されるという。輸出先では、商魂たくましい現地の業者が古着を選別し、質の高い物をEtsyやeBayに出品して米国人に販売している。
このサイクルに拍車をかけているのがECだ。Digital Commerce 360によると、2021年のアパレル売上高の約半分はECサイトの売上だった。同年、米国におけるEC経由のアパレル売上高は25%増加し、1805億ドル(約21兆円)に達した。
ネットショッピングでは予定よりも多くの服を買いがちだ。2021年にECカスタマーサービス会社、NarvarがECサイト利用者を対象に実施した調査では、利用者の半数以上がサイズの合わない方を返品するつもりで、同じ商品のサイズ違いを同時に購入すると回答した。合わなかった服の返品を要求しない企業もあるため、寄付や廃棄の対象となる服は増え続けている。
定量化は難しいが、ECは衣料品の購入を促進している可能性が高いとGlobalDataの小売アナリストNeil Saunders氏は言う。オンラインショッピングの登場により、消費者は地元のショッピングモールにないブランドもチェックできるようになり、1日中いつでも買い物ができるようになった。
「買う機会が増えれば、買いたいという衝動も増える」とSaunders氏は言う。
寄付された服がたどる、4つの典型的な運命を紹介しよう。
あなたのお気に入りだった服は、ただの雑巾になるかもしれない。Secondary Materials and Recycled Textiles Association(SMART)によると、リサイクル業者に買い取られた古着の一部は、自動車クリーニング用のウエスや家具の詰め物、自動車の防音材などに加工されるという。繊維リサイクル業者は、材料となる古着を駐車場などに置かれた寄付ボックスから直接回収するか、慈善団体から購入している。
これはジーンズを寄付した人が思い描くリサイクルのイメージとは違うかもしれない――そう指摘するのは、SMARTを率いるJackie King氏だ。
「多くの人が、寄付した服はすぐに棚に並べられると考えているが、必ずしもそうではない」と同氏は言う。
しかし繊維リサイクルには良い面もある、とKing氏は強調する。商品の生産に必要な新しい布地の量が減るため、天然資源を節約できるだけでなく、焼却処分や埋立て処分の対象となる古着も減らすことができる。慈善団体も、古着をリサイクル業者に売ることで運営費を確保できる。
古着がリサイクルされて新しい服に生まれ変わることはめったにない。ほとんどの服は天然繊維と合成繊維の混紡であり、分解して新しい生地を作ることが難しいからだ。
ガーナの首都アクラの青空市場を歩くと、あちこちで米国から輸入された古着を見かける。これはアフリカの他の国でもよく見る光景だ。輸入業者がまとめ買いした古着を小売業者が買い、選別する。仕入れ先は古着の売り上げで運営費をまかなっている慈善団体や繊維リサイクル業者だ。
もっとも、古着を輸入している国の人々が必ずしも古着の流通を好ましく思っているわけではない。輸入古着は国産の衣料品と競合する。東アフリカの4カ国は、国内の繊維産業を保護するために輸入を禁じようとしたが、米国政府が各国から輸入する衣料品に関税をかけると圧力をかけると、ルワンダ以外の国は禁止措置を撤回した。
衣料品は環境汚染の原因となる可能性もある。米国とガーナで責任あるファッションを提唱しているOR財団が実施した調査によると、アクラでは埋立地からあふれた、行き場のない古着が屋外で焼却され、環境汚染を引き起こしているという。
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