「コロナでの一斉休校で、それまで制限していたのに自由に使わせるようになったら、子どもがオンラインゲームにはまってしまった」「ゲームにはまりすぎて朝は起きられなくなり、学校に遅刻したり欠席するようになった。徹夜でゲームをして、寝ないで学校に来ることもある」
どちらも、コロナ禍での一斉休校後に保護者や教員から聞いた話だ。一斉休校をきっかけにオンラインゲームやネットの利用時間が長くなり、依存状態となる子が少なくないようだ。子どもたちはなぜネットやゲームにはまるのだろうか。
都民安全推進本部の「家庭における青少年のスマートフォン等の利用等に関する調査」(2021年4月)によると、新型コロナウイルス感染症の影響で、小学校低学年から高校生まですべてで「ネットの利用時間が増えた」という回答が約5割、「ルールを守れないことが増えた」が約1割だった。「(ネット)トラブルが増えた」は子どもの年代が低いほど比率が高く、小学校低学年では他の年代の2倍程度となった。子どものネット利用に与える影響がかなり大きいことが、よく分かるだろう。
さらに何をする時間が増えたか聞いたところ、「動画配信等の動画を見る」(63.6%)、「メッセージアプリで連絡を取る」(38.5%)、「オンラインゲームで遊ぶ」(35.4%)、「SNSの閲覧・投稿をする」(25.5%)、「学習、調べ物をする」(17.2%)となった。動画を視聴したり、ゲームやSNSに使う時間が増えていることがほとんどだ。
それでは、どのようなトラブルが増えたのか。「注意しても長時間利用」が59.2%で最多に。続いて「アプリやゲームの購入・課金」(37.9%)、「メールやSNSで友だち等とトラブル」(30.1%)、「個人情報の漏洩」(23.3%)、「誹謗中傷などの書き込み」(14.6%)、「ネット上で知り合った人と会う等」(9.7%)、「下着姿や裸の写真・動画の送受信」(7.8%)などとなった。
依存状態となった結果、高額課金につながるなど、利用時間が長くなることでコミュニケーショントラブルなどに巻き込まれているのだ。それだけでなく、出会い系被害や自画撮り被害などの深刻な被害につながってしまっている状態だ。
Netflixのドキュメンタリー作品「監視資本主義:デジタル社会がもたらす光と影」では、元社員などの証言を多く聞くことができる。SNSなどのサービスがどれだけ依存性が高いものか、その仕組みとともに、仕掛けがわかっていてもはまってしまう依存性の高さに驚かされる。
これはオンラインゲームも同様だ。ランキングで承認欲求が満たされ、他人とコミュニケーションできることでつながり欲求が満たされ、人間関係でやめづらくなる。終わりがないので永遠に続き、ガチャにはまって課金をし、今やめるともったいないというコンコルド効果で使い続けてしまう。
「依存状態になる子は、学業不振や人間関係のトラブル、家族関係の問題などから、逃避的にはまっていく子が多い」と、多くの教員や相談機関の相談員から聞いた。部活動などに熱心な子どもは依存状態となることはほぼないが、部活に熱心だった中学生が、一斉休校でやることがなくなった時に利用し始めてはまってしまった例を聞いている。
ゲームやSNSは刺激に満ちており、受け身で楽で気が紛れて楽しい。やることややりたいことがないと、現実よりも容易に心や時間を満たしてくれるため、まだ欲求をコントロールできない子どもがはまってしまうのはある意味当然なのだ。
Twitter、Facebook、Instagram、TikTokなど多くのSNSは13歳以上を対象とするサービスだ。しかし、都民安全推進本部の「家庭における青少年のスマートフォン等の利用等に関する調査」(2021年4月)によると、スマートフォンを利用する小学生におけるSNSの利用率は、「LINE」が70.0%、「Twitter」が13.2%、「TikTok」が10.8%、「Instagram」が9.7%、「Facebook」が8.9%などとなっている。また、小学生の間では「フォートナイト」などのオンラインゲームが人気となっているが、このようなゲームは多くが15歳以上対象だ。
小学生の場合、保護者が緊急連絡用にスマホを持たせることが多く、保護者との連絡用にLINEから利用し始めることがほとんどだ。ところがスマホを持つことで、多くの場合は対象年齢外のSNSやオンラインゲームにはまり、長時間利用するようになっている。
同調査で、そのようなSNSに利用規約上で年齢制限があることを知っていたか聞いたところ、約4割の保護者が「知らなかった」と答えている。対象年齢以外でも利用していけないわけではないが、保護者の見守りは必須となる。このようなサービスにはペアレンタルコントロール機能や年齢による機能制限があるものも多いので、積極的に活用すべきだろう。
SNSやゲームは、うまく使えば楽しいものだ。しかし、すでに述べたように、残念ながら依存性が高く、はまってしまう子も少なくない。利用をコントロールするための機能をうまく取り入れた上で、子どもと利用上の約束を取り決め、周囲の大人が利用を見守るようにしてあげてほしい。
高橋暁子
ITジャーナリスト、成蹊大学客員教授。SNS、10代のネット利用、情報モラルリテラシーが専門。スマホやインターネット関連の事件やトラブル、ICT教育に詳しい。執筆・講演・メディア出演・監修などを手掛ける。教育出版中学国語教科書にコラム 掲載中。元小学校教員。
公式サイト:https://www.akiakatsuki.com/
Twitter:@akiakatsuki
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