コロナ禍が長引き、なかなか先が見通せない状況が続いているが、コロナ禍はネット利用時間の増加に大きな影響を与えているようだ。コロナ禍に見る、大学生のネット、ゲーム事情について見ていきたい。
筆者が大学での講義中に、143名を対象にアンケートを取ったところ1日の平均ネット利用時間は、「8時間以内」が50.3%で最多に。続いて「5時間以内」(24.5%)、「10時間以内」(16.8%)、「2〜3時間程度」(4.9%)、「10時間以上」(3.5%)となった。コロナ禍の影響もあり、大学生のネット利用時間は長くなる傾向にある。
ある大学の准教授が、「学生に普段していることを聞いたら、『バイト』『ゲーム』しか出てこなかった」と言っていた。コロナ禍で大学にもあまり行けず、サークル活動も制限される中、自宅でゲームや動画サイトを見るか、バイトに励む学生が多いようだ。学生たちに話を聞くと、「1日中はまってゲームばかりしていた」と言っていた学生は複数いた。
「オンライン授業の最中は別のことをしている学生は多いと思う」とある学生に聞いた。「『出席だけして寝てる』という人もいるし、『ゲームやSNSの時間』とか、『他の授業の課題をしている』という人も。ある人は、『ブレイクアウトセッションが始まったのに気づかず、最後まで寝てた』と言っていた。参加型で集中力が切れないようにしている講義はいいけれど、ただ聞いているだけの講義は、どうしても気が散ったり、他のことをしたくなるみたい」
学生たちにゲーム課金についても聞いたところ、「課金はしない、またはゲームをしない」が80%と大半を占める。一方、「月額平均5000円以内の課金をしている」が4%、「月額平均1万円以内の課金をしている」が2%、「月額平均1万円以上の課金をしている」も2%など、2割が何らかの課金をしてゲームを楽しんでいるようだ。
「バイト代はほとんどすべてゲームにつぎ込んでいる」という学生もおり、ゲームは外出しづらい中の貴重な楽しみとなっている。「コロナ禍で学校にも行けずストレスだったので、荒野行動にはまった。友だちとオンラインで話せたので、ストレス解消になった」と言う学生もいる状態だ。
今はまっているゲームを聞いたところ、バトルロイヤル系ゲームの「Apex Legends(エーペックスレジェンズ)」、サッカーゲーム「ウイニングイレブン」シリーズが圧倒的な人気を集めた。ウイイレはサッカー好きから強い支持を集めている。女子大学生には「ディズニーツムツム」が強い人気があり、そのほか「モンスターストライク」「パズル&ドラゴンズ」「ツイステッドワンダーランド」「ONE PIECE バウンティラッシュ」「荒野行動」「雀魂(じゃんたま)」なども利用者が多いようだ。
「弟が荒野行動にはまっていた。一度はやめるつもりでアプリを消したのに、数日で戻っていた。寝ていてもLINEグループの仲間に起こされて、ゲームをしていた。フリーターの大人の仲間が呼び出していたらしい」。このように、他の年代や直接知らないゲーム仲間とゲームを楽しむ学生も少なくない。
大学生は懐が厳しいことが多く、前述のように「課金はしない」派が多勢を占めるものの、ゲーム課金に対してポジティブにとらえ、積極的に課金する派も少なくない状態だ。これは、他の調査結果でも同様の傾向がうかがえる。
SMBCコンシューマファイナンスの「10代の金銭感覚についての意識調査2020(9月調査)」によると、ゲームへの課金をしているか聞いたところ、「している」は12.7%、「していないが、したいと思う」は 17.7%で、計30.4%が課金に対して前向きに回答。
男女別にみると、ゲームへの課金に前向きな人の割合は男性が38.0%と、女性が22.8%と、男性のほうが女性より15.2 ポイント高くなった。学生区分別にみると、ゲームへの課金に前向きな人の割合は、高校生は33.7%、大学生等は25.5%となった。ゲーム課金をしている人に、ひと月あたり、ゲーム課金にいくらくらい使っているか聞いたところ、「1000〜2000円未満」(32.3%)が最多となり、平均は1512円だった。
『お金を使ってでも(課金してでも)ゲームを有利に進めたい』かについて聞いたところ、「そう思う」は 11.1%となった。男女別にみると、「そう思う」という割合は、男性16.0%、女性6.2%と、男性のほうが9.8ポイント高くなった。『ほしいアイテム・キャラを手に入れるためのお金は惜しみたくない』では「そう思う」は15.0%、『お金を使わないと楽しく遊べない』では「そう思う」は13.2%、『レアアイテムやレアキャラを手に入れたときは誇らしい気持ちになる』では「そう思う」は 39.8%に。若者において、ゲーム課金に対してポジティブにとらえる割合は高めのようだ。
一方、ゲーム課金したことに後悔したことがあるか聞いたところ、「ある」は22.4%、「ない」は77.6%となり、一定数は後悔していることがわかる。男女別にみると、後悔したことがある人の割合は、男性では 31.0%と、女性(13.8%)と比べて 17.2 ポイント高くなっていた。
学生たちからは、「ランキングはやっぱりモチベーションになっている」「音楽を買うからお金はもともと入れてある。でも、気づいたらそのお金をゲーム課金に使ってしまっている」などという声を聞いた。「オンライン授業は楽だけれど、友達に会えないし張り合いがない。やはり大学に行きたい」。
執筆現在、都内の大学生や教職員などを対象に、大学会場におけるワクチン接種が始まっている。「ワクチン打ちました。ちょっとほっとした。対面授業ができるようになったら嬉しい」とある学生は言う。そのような声は複数聞いている。コロナ禍の影響は長引いているが、少しでも早く日常を取り戻し、充実した学生生活が送れることを願っている。
高橋暁子
ITジャーナリスト、成蹊大学客員教授。SNS、10代のネット利用、情報モラルリテラシーが専門。スマホやインターネット関連の事件やトラブル、ICT教育に詳しい。執筆・講演・メディア出演・監修などを手掛ける。教育出版中学国語教科書にコラム 掲載中。元小学校教員。
公式サイト:https://www.akiakatsuki.com/
Twitter:@akiakatsuki
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